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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の健康相談室

  耳がくさいのが心配  dog2ani.gif 31x25 1.63KB

耳の病気に関する一般情報
外耳炎の原因
必要な検査
家庭での処置
病院での治療
日常生活での注意点

■耳の病気に関する一般情報
 犬の耳の中が赤いとか、臭い場合、外耳炎、すなわち耳の穴の入り口に近いほう(外耳道)が炎症を起こしている可能性があります。外耳炎が慢性化している場合、すでに約半分ぐらいの例で鼓膜が破れています。したがって、外耳より奥の中耳、あるいはさらに奥の内耳にまで炎症が及んでいる可能性が高いことになります。

 統計的には、犬の10〜20%が耳の病気を持っていると推測されます。また、年齢的には、5〜8歳の犬に最も耳の病気が多いようです。
耳の構造上の特徴も耳の病気と深い関係があります。外耳炎の原因となる病気の80%は、耳が長く垂れている犬種や、耳道に毛が多く生えている犬種に発生します。また、ジャーマン・シェパードのように耳が直立している犬種にも耳の病気が見られます。
耳が垂れていたり、耳道に毛が多い犬は、空気の流通が悪く、感染が起こりやすいのです。

 犬の生活環境が原因で耳の病気が起こることもあります。たとえば、水が好きで、よく水浴びなどをする犬は、耳の中に水が入りやすく、水分をそのまま放置しておくと、病原体に感染しやすくなります。

 また、よく野外へ出る犬も感染の機会が増え、病気が起こりやすくなります。たとえば、植物の多い場所で遊んだりすると、植物の実が耳に入り、病気の原因になることがあります。ほかにも、いろいろな異物が耳に入ることがあります。ミミヒゼンダニ、疥癬(カイセン)、毛包虫(モウホウチュウ)などの寄生虫に感染することもあります。

 飼い主の耳の掃除の仕方が悪くて、犬が外耳炎になってしまうこともあるので、注意しましょう。たとえば、綿棒を耳の中に強く押し込み、どこかに傷がつくと、そこから細菌が侵入し、炎症を引き起こすことがあります。
■外耳炎の原因
 外耳炎の原因として最初に考えるべきなのは、寄生虫の感染です。特に多いのはダニで、犬の外耳炎の5〜10%はダニが関与していると言われています。ダニの種類としては、ミミヒゼンダニ、イヌニキビダニ、ネコミキビダニ、その他カイセン類のダニが多いようです。 しかし、ダニの発見はそれほど簡単ではありません。たとえばカイセンは、わずか2〜3匹いるだけで、感染を引き起こすことができると言われています。外耳炎の症状が見られても、2〜3匹ではなかなか発見できません。

 症状が現れたときには、すでにダニが外耳道から離れていたり、死んでしまっていることもあります。そのため、実際はダニが外耳炎の原因であるのに、判定がなかなかできない場合もあるのです。

 マラセチアというカビの一種が外耳炎の原因になるケースも、かなり多く見られます。
次に考えるべき原因は、アレルギーです。中でも発症頻度が高いのはアトピーです。アトピーは通常、耳以外のところにも症状が現れますが、3〜5%は耳だけにしか症状が現れません。

 また、アレルギー性外耳炎の約20%は、食事アレルギーが原因と言われています。稀に、外耳炎の治療薬によって接触性皮膚炎(アレルギー)が起こることもあります。
 アレルギー全体では、80%が耳に影響を与え、耳が赤くなったり臭くなったりする症状が認められます。つまり、アレルギー性の病気があれば、耳を良く調べる必要があるということです。その他、いろいろなホルモンが関係する内分泌障害のため、外耳炎が引き起こされることもあります。

外耳炎の原因はさまざま
ダニ(ミミヒゼンダニ、イヌニキビダニ、
ネコニキビダニ、カイセン類のダニ)による感染
カビ(マラセチアなど)や細菌
アレルギー(アトピー性皮膚炎や食事アレルギー、
接触性アレルギー)
内分泌障害
自己免疫性疾患
腫瘍

■必要な検査
 耳の病気の検査として、通常はまず耳鏡検査を行います。耳鏡は小型の筒状のジョウロに似た器具で、これを耳の中に入れて、異物がないかどうか、鼓膜が破れていないかどうか、滲出物や病変の状態等をよく調べます。外から形式的に見ただけでは、不十分です。

 慢性の場合は、滲出物があれば取り出し、細胞の培養などを行い、感受性テストをして、効果のある抗生物質を決めます。また、バイオプシー(生検)による組織検査を行うこともあります。

 非常に重度で、耳の穴がどこにあるかわからないほど、耳が腫れている場合は、検査を十分できないこともあります。これらは「耳垢性外耳炎」まはた「増殖性外耳炎」と呼ばれます。この場合は、まず薬剤等によって炎症を軽くする治療を行い、数日後に再び検査を行って、原因を調べたりすることもあります。

 また、重度の場合、X線検査が必要となります。耳道が白くなっていれば、石灰化しているのですから、通常は薬剤による治療は困難です。手術による治療が必要となるでしょう。慢性のケースでは、確定診断を下すためにいろいろな検査が必要になります。
■家庭での処置
 耳の病気を早く発見するために、犬をよく観察することが大切です。
耳が臭くないか、あるいは赤くなっていないか、耳をかゆがっていないか、頭をよく振ることはないかなどを観察します。耳をかいている場合は、どちらの耳をよくかくかを観察しましょう。

 慢性化している場合、耳が肥厚する、すなわち耳の穴が見えにくくなります。
耳の中が赤く腫れていれば、アトピーの可能性が高いと考えられます。
外耳炎があると、耳はもちろん、頭に触られるのも嫌がることがあります。耳に痛みがある場合、頭に触られるのも嫌がるのです。愛犬が頭に触らせなかったら、耳の病気も疑ってみましょう。

 よく頭を傾けるときは、かなり重症になっている可能性があり、炎症が中耳あるいは内耳まで進んでいることが考えられます。特に内耳にまで炎症が及んでいる場合は、運動障害や片目の瞳だけが小さくなったり(縮瞳)、まぶたが垂れ下がったりすることもあります。

 愛犬が何らかの耳の病気にかかったことが疑われるときは、飼い主が原因を考えてみることも大切です。 たとえば、水に入った後に頭を振るようになったとか、草むらで遊んだ後に耳をかゆがるようになったことが分かれば、原因を特定しやすくなります。
 また、いつも決まった季節になると耳の調子が悪くなる場合、季節的な要因で起こる病気を推定することができます。

耳の状態をチェック
耳の病気を早期に発見するため、日ごろから耳のチェックをかかさず行おう!
耳がくさいか?
耳がいつもより赤くなっているか?
赤く腫れているか?
耳をかゆがってかいているか?
どちらの耳をかいているか?
耳の穴が狭くなっているか?
頭や耳を飼い主に触らせるのを嫌がるか?
頭を頻繁に振っているか?
あるいは、頻繁に頭を傾けるか?
運動障害はあるか?
片目だけ小さくなっているか?
あるいは、まぶたが垂れ下がっているか?

■病院での治療
 外耳炎の治療は、まず原因となっている病気を調べ、それらの症状をコントロールすることから始めます。 獣医師にとっては、治療を成功させるために、治療計画について飼い主とよく話し合うことが非常に重要となります。通常は、一回や二回で治る病気ではないので、飼い主の理解と協力が必要だからです。

 原因を調べる際には、先述のように耳鏡で中を観察します。滲出物を綿棒等で採取し、培養して調べます。必要であれば耳の中の毛を抜き、抗生物質等で洗浄し、耳垢を除去します。

 洗浄や十分な検査を行うとき、犬が動かないように固定することが必要となる場合があります。このときは通常、鎮静剤や麻酔剤を使います。 特に重症例では、犬を固定して耳の洗浄を繰り返す必要がありますから、鎮静剤や麻酔剤を使う機会が多くなります。たとえば、耳の表面が肥厚していたり、角化している場合、これらの状態はすぐには元に戻りません。したがって、検査や洗浄を繰り返すことが必要になります。
原因を判定した後、それに合わせた治療薬を全体に薄く塗ります。必要に応じて再検査をし、治療を変更するケースも生じるでしょう。 薬剤による治療で治らない場合、最終的に手術による治療が必要になることもあります。
■日常生活での注意点
 予防としては、まず愛犬が外耳炎にかかりやすい犬種かどうかを確認しておくことが重要です。 過去に外耳炎など耳の病気を起こしたことがあれば、獣医師の指示にて、家庭で耳の洗浄を行うことが予防につながります。前提条件として、おとなしく耳を洗浄させることができる犬だけに使用できます。小さいときからきちんとしつけをしてある犬は大丈夫でしょう。 ただし、家庭での洗浄はあくまでも予防措置なので、急性の炎症や潰瘍のある場合はやめましょう。 これらの病気が治った後、再発しないための予防措置と考えてください。

 洗浄液は「耳垢溶解液」と言われ、動物病院で入手できます。道具は、人間用の耳を洗うゴム球等が使用できます。 綿球に洗浄液をしみこませて、耳の中に入れる方法もあります。この場合、綿球を耳の穴に詰めて、5分くらいそのままにしておきます。あるいは、その状態で耳をマッサージするのもよいでしょう。この方法は、滲出物等で耳の中が汚れている場合、特に有効です。

 洗浄の回数や頻度も、獣医師のアドバイスに従ってください。あまりに洗浄を重ねると、薬剤が耳の中に蓄積して危険だからです。
また体をシャンプーするとき、耳も洗浄するとよいでしょう。その後、家庭では食酢と水を等量混ぜ合わせた液で耳を洗い流すと効果的です。