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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の健康相談室

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赤目とは
原因
検査
家庭での処置
病院での処置および治療法
日常生活での注意点

■赤目とは
 愛犬の目が赤くなれば、飼い主の方はすぐに気づくでしょう。交通信号でも赤い色は危険信号です。動物の目が赤くなったときも、危険の警告信号ととらえてください。

 われわれ獣医師は、目が赤くなることを「赤目」(レッドアイ)と呼び、いくつかの病気を推定します。最も恐い病気は「緑内障」です。早期に治療しないと犬は盲目となり、二度と視力は回復しません。

 同じ赤目となる病気でも、結膜炎などはあまり心配する必要はありません。治療も比較的簡単で、通常は抗生物質等を与えれば、赤目は治ります。

 重要なのは、緑内障のような恐い病気と比較的簡単に治せる病気を鑑別することです。動物が赤目となったとき、ほかに以下のような点に注意しましょう。

 まず、視力の低下または喪失があるかどうかです。犬は人間ほど視力に頼っていませんので、盲目になったことに飼い主がすぐに気づかないことがあります。同じ環境にいる限り、物(家具等)の配置などを覚えているので、視力がなくても、それらにぶつからず、普通に生活できるからです。

 したがって、視力の有無を調べるときは、家具の配置を変えるとか、外に連れ出してみます。もし家具にぶつかったり、外で障害物を避けられない場合は、視力がなくなっていると判断できます。この検査は、もし赤目が片方だけの場合、もう片方は正常である可能性がありますから、その目にカバーをして行います。

 また、目を痛がっているかどうかを調べます。これも緑内障等の恐い病気を知らせる危険信号です。犬は目が痛いとき、目をつむります。犬が目をつむっていれば、目が痛いのだと考えてください。もちろん、目に触った場合も、痛がります。

 瞳の輝きがなく、曇って見えるとき(不透明化)、視力を喪失している可能性があります。
左右の瞳孔(瞳)の大きさや形にも注意します。特に瞳が小さくなった場合は、緑内障が強く疑われます。

赤目になったときは、次の点をチェックしよう
□視力の低下または喪失があるかどうか?
□目に痛みがあるかどうか?
(目を頻繁につむるかどうか?)
□目が白濁(不透明化)していないかどうか?
左右の瞳の大きさや形は正常かどうか?
過去に眼の病気にかかったことがあるかどうか?
(特に緑内障、虹彩炎などの病気にかかったことがあるかどうか?)

■原因
 赤目の原因となる病気で最も恐ろしいのは緑内障です。前述のように、早期に適切な治療をしないと、犬は視力を失います。盲目になるのを防ぐには、早期発見しかないと言えるのですが、その早期発見がなかなか難しいところが問題です。
 実際に、病院へ連れてこられたときはすでに犬は盲目となっているというケースがほとんどです。

 また、最近では改善されつつありますが、以前は「獣医師は目の病気に盲目なのか?」と言われるほど、目の病気を調べようとする獣医師が少なく、病院でもなかなか緑内障を診断できないケースがかなり多かったことも、残念ながら事実です。

 しかし、盲目となる前に緑内障と診断されても、この病気を長期的に管理することはなかなか難しく、最終的には盲目となり、痛みを抑える治療だけを行い、あとは眼球を摘出するか、義眼を入れる方法しかないというケースが多いようです。

 緑内障は「房水」と呼ばれる眼球内の液体がうまく外に出られなくなり、そのために目の中の圧力すなわち「眼圧」が高くなって、さまざまな障害が引き起こされる病気です。

 急性と慢性があり、急性の場合、発症から2〜3日で完全に盲目になってしまいます。症状はいろいろありますが、典型的な特徴は目が異常に大きくなることです(まるで牛の目のように大きくなるので、「牛眼」と言われます)。特に年齢が若いほど、急速に目が大きくなります。そして、瞳孔も大きくなります。また、目が痛むため、犬は目をつむります。
 赤目となるのは、結膜や上強膜と言われる部分が充血するからです。そして、目の表面の角膜が腫れて全体が白濁し、瞳の輝きが失われます。

 とにかく、犬が急に目をつぶることが多くなり(すなわち目が痛い)、目が赤くなったら、緑内障を疑い、すぐに病院へ連れて行ってください。その病院で「様子を見ましょう」と言われたら、別の病院へ連れて行きましょう。

 結膜炎も赤目となる病気です。ほかに目やにがよく出るのが特徴です。眼圧は正常ですから、犬は目をほとんど痛がりません。瞳孔にも影響はありません。

 急性虹彩炎でも赤目になります。虹彩炎の症状のいくつかは緑内障と反対となるのが特徴です。たとえば、瞳孔が小さくなります。眼圧は正常であるか、または低下します。通常、痛みはありません。視力の低下は見られますが、完全に失明することはありません。
また、涙や目やにが出るのも特徴です。

 赤目となる病気では、緑内障に次いで葡萄膜炎も恐い病気の1つです。原因としては、外傷、感染、腫瘍のほかに、「自己免疫疾患」が考えられます。免疫は正常な状態では、体にとって敵(異物)であるものを攻撃しますが、何らかの理由で過剰に反応して、体の組織を攻撃することがあり、その結果起こる病気を「自己免疫疾患」と呼びます。このような病気はいろいろな免疫抑制剤で治療します。
 その他、角膜の炎症や腫瘍が原因で赤目となることもあります。
■検査
 犬に何らかの目の病気があり、その影響が全身に及んでいる可能性がある場合は、血液検査をはじめとした諸検査が必要になることがあります。

 視力の有無を調べるとき、一般的に次のような方法で行います。適当な大きさの脱脂綿を手に持ち、犬の頭の上から目の前を通過するように落とします。これを左右の目について別々に行います。視力があれば、犬は落下していく脱脂綿を目で追います。目で追わなければ、視力がなくなっていると判定できます。
 このテストを行うとき、犬をテーブルなどの上にのせ、脱脂綿が犬の体より下の落ちるようにしましょう。落ちた音に気づいて脱脂綿を見るのでは、正しい判定ができません。
■家庭での処置
 家庭でできる治療法としては、軽度の結膜炎のようなわかりやすい病気であれば、点眼薬で目を洗う程度の処置をできるでしょう。もちろん、犬が点眼薬を差されるのをいやがらないように、日頃からしつけをしておくことが大切です。子犬のときから十分にスキンシップをし、信頼関係を築いておきましょう。

 前述のように、犬が視力を喪失しても、飼い主がなかなか気づかないケースがかなり多くあります。視力がなくても、環境が変わらなければ、犬は比較的支障なく日常生活を送ることができるからです。

 しかし、もし視力を喪失したのなら、その原因は何か、治療法はあるかなど、できるだけ早く知る必要があります。そのために、動物をよく観察することが大切です。
たとえば、家具の配置を変えたとき、犬がぶつかるようなら、視力を喪失していることが考えられます。その他にも、いろいろな異常に早く気づくには、やはり犬をよく観察することが大切です。

 目が痛いとき、犬は目をつむります。ですから、犬がよく目をつむっていたら、目が痛いのだと判断してください。特に緑内障にかかると、通常は強い痛みがありますから、犬はよく目をつむります。気づいたらすぐに、動物病院へ連れて行かなければなりません。
 また、たとえば目やにがよく出る場合、環境の変化と関係がないかどうか、よく考えてください。たとえば、外で散歩した後に目やにがひどくなれば、目やにの原因が外の環境にあることが推定できます。
■病院での処置および治療法
 前記のさまざまな検査により病気を診断し、病状に応じた処置をします。
たとえば、血管の充血を治すだけで良い場合、血管収縮剤を使用したり、感染症を起こしている場合、あるいは防ぐ場合は抗生物質を投与します。
 また、眼圧が高ければ、眼圧を下げる薬を処方したりします。

 緑内障のように痛みを伴う場合は、鎮痛剤を使って、痛みを軽減する処置をとることもあります。特に急性緑内障の場合、外科手術が適応となることもあります。この場合、手術をすることの長所、短所をよく聞いておくことが必要です。
■日常生活での注意点
 やはり、普段から犬をよく観察することが最も大切です。
犬は嗅覚や聴覚が非常に発達しており、それらの特性は人間社会にも役立てられています。これに対して、視覚への依存度はさほど高くなく、そのためこの感覚はあまり発達していません。したがって、たとえ視力を失っても、人間ほど不自由を感じないと思われます。しかし、ある程度の不自由はあるはずですし、また、犬が視力を失えば飼い主もその分、配慮が必要となります。(表参照)

 予防が一番です。それには、異常に早く気づく必要があります。犬の目が赤くなれば、比較的簡単に気づくでしょうが、そのほかに症状がないかどうか注意しましょう。
 また、目の病気も、ある程度高齢になると増える傾向があります。ですから、高齢犬は特に定期的なチェックを行うことが大切です。

 たとえば、目にライトを当てて、瞳を調べます。すなわち、瞳がいつもより大きくなっていないかどうか、あるいは逆に小さくなっていないかどうか、また左右の瞳の大きさが違っていないかどうかなどを調べます。

 もし瞳が大きくなっていれば、恐ろしい緑内障が疑われます。逆に小さくなっていれば虹彩炎が疑われます。また、左右の瞳の大きさや形が違えば、目の中の炎症や損傷が考えられます。

 犬の目を一度閉じ、再び開かせる方法も良いでしょう。もし何らかの目の病気があれば、そのようにされることを犬は嫌がるからです。犬が嫌がるようなら、できればほかにも異常がないかどうか観察し、動物病院へ連れて行きましょう。

 前述のように、赤目となる病気で最も恐いのは緑内障です。特に好発犬種はなく、すべての犬種がこの病気にかかる可能性があります。特に急性の場合、眼圧が急激に上昇するため、強い痛みがあり、一部の犬は頭を突き出して鳴き声を上げることがあります。そして、急に元気がなくなり、食欲も喪失します。
 このような緑内障の症状は急に現れます。「しばらく様子を見よう」と言っていたら手遅れになります。すぐに病院へ連れて行きましょう。


視力を失った犬の接し方 5大原則
その1 まず声をかけてから 視力を失うと、何かにぶつかる機会が多くなり臆病になります。ゆえに飼い主は常に何かをする前には声をかけましょう。たとえば、触る場合も一声かけてから触ります。
その2 しつけが最も重要 危険が予測される前にその動作を止めるには、何よりしつけが一番です。そのため、「オスワリ」、「マテ」、「オイデ」をしつけるほか、「フセ」、「アトエ」も覚えさせるとさらにいいでしょう。まずは飼い主がリーダーになる必要があります。
その3 あらかじめ危険を避ける たとえば、室内の家具などの配置にも気を配り、なるべく犬がぶつからないように工夫してあげます。
その4 始めはリードを付けて犬を誘導 さまざまな危険を避けるため、始めはリードをつけて誘導しながら、合図と行動をもって覚えさせます。
その5 嗅覚と聴覚の感覚を利用 たとえば家でも外でも風向きなどを考えながら、愛犬の行動を観察します。何かの音を合図に使用したりすることも有効です。