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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学
最も実践的な獣医療のために

犬の副腎皮質機能亢進症(犬のクッシング症候群)
(2005/5/14 第二回改訂)


医原性副腎皮質機能亢進症
vs
自然発症性副腎皮質機能亢進症
自然発症性副腎皮質機能亢進症
下垂依存性副腎皮質機能亢進症
副腎腫瘍性副腎皮質機能亢進症
医原性副腎皮質機能亢進症
下垂体依存性副腎皮質機能亢進症
副腎(腫瘍性)依存性副腎皮質機能亢進症
医原性副腎皮質機能亢進症
下垂体依存性副腎皮質機能亢進症
 ・90%(85%)小型犬が多い
 ・副腎(腫瘍性)依存性副腎皮質機能亢進症
 ・10%(15%)大型犬が多い
 ・雌が多い
下垂体依存性副腎皮質機能亢進症
 ・85%(80〜90%)
 ・50〜60%は小さい腫瘍あり
 ・Macro-Tumor Syndrome
 ・10〜20%は腫瘍が大きくなる(予後が悪いタイプ)
副腎(腫瘍性)依存性副腎皮質機能亢進症
 ・腺腫良性50%
 ・腺腫悪性50%

クッシング症候群とは?
慢性的に過剰なコルチゾールに暴露さらされて起こる症状群
自然発症性→副腎が亢進
医原性(外因性)→副腎が低下
副腎の働き
 ・副腎髄質(adrenal medulla)→カテコールアミンを分泌
 ・アドレナリン(エピネフィリン)
 ・ノルアドレナリン(ノルエピネフィリン)
副腎の働き
副腎皮質→ステロイドホルモンを分泌
球状層zona glomerulosa 球状帯(副腎皮質の外層で、被膜の直下にあり、アルドステロンを分泌する)
→ミネラルコルチコイド
束状層zona fasciculata 束状帯(副腎皮質の球状帯と網状帯の間にある放射状配列をした細胞索の層で、コーチゾルとデヒドロエピアンドロステロンを分泌する)
→グルココルチコイド 
網状層zona reticularis 網状帯(副腎皮質の内層で細胞索が網状に吻合している)
→性ホルモン
好発犬種
ポメラニアン
ボストンテリア
ダックスフンド(長毛?)
ヨーキー
プードル
ビーグル
ボクサー
小型犬が多いが、副腎腫瘍は大型犬が多い?
発症年齢
平均12歳
・6ヶ月〜17歳
・副腎腫瘍は雌が雄の3倍の発症雌が多い
コルチゾールが増加すると?
免疫低下作用
蛋白異化作用
糖新生作用
抗炎症作用
脂肪分解作用
抗インスリン作用
臨床症状
腹部膨満(93〜95%)
多飲多尿(85〜97%)
脱毛(55〜90%)
多食(77〜87%)
筋力低下と元気消失(74〜82%)
その他の臨床症状
皮膚の石灰化
無関心状態
あえぎ呼吸
皮膚の変化 
クッシング症候群の発症

皮膚の変化

腹部膨満
身体検査
呼吸速迫→パンティング(あえぎ呼吸)
肺胞換気機能の低下→ピックウィッキアン症状群
診断
血液像(ストレス・パターン)
赤血球増加、超音波検査
血清生化学検査(ALP,ALT,TCho↑)
X線撮影検査、血圧、副腎機能検査
尿検査
尿比重→1.015以下 60%
尿路感染→50%
コルチゾールは免疫を低下
Dr.Lingの117例の報告(Davis)
血糖値→57%
ALT→ 74%
ALP→70%
TCo→90%
X線撮影検査
胸部の陰影の特徴
・気管支の石灰化
・副腎の腺癌からの転移像は?
・心拡大?
副腎機能検査
病気が存在する?存在しない?
低容量デキサメサゾン抑制試験
・副腎の超音波検査
・ACTH刺激試験
・尿コルチゾール/クレアチニン比
副腎機能検査
下垂依存性?副腎腫瘍性?どちらかの鑑別
高容量デキサメサゾン抑制試験
・内因性ACTH濃度検査
・副腎の超音波検査
低容量デキサメサゾン抑制試験
・正常犬は低いステロイドの投与で脳下垂体からの
ACTHの放出を抑制させコルチゾールを減少させる。
・病犬はステロイド抑制に耐性する。
よってデキサメサゾン投与後の抑制が欠除する。
低容量デキサメサゾン抑制試験
・下垂依存性を95%の確率で診断
・副腎腫瘍を100%の確率で診断
・全体では90〜95%の確率で診断
低容量デキサメサゾン抑制試験
0.01mg/kgのデキサメサゾン静注
・前値と(4時間値)と8時間値を採血
・8時間値で振り分けのみ診断
・4時間値も参考にすると振り分け可能?
低容量デキサメサゾン抑制試験
0.01mg/kgのデキサメサゾン静注
・正常値は8時間値は1.4μg/dl以下
・すなわち8時間値で1.4μg/dl以上
で副腎皮質機能亢進症の診断できる。
低容量デキサメサゾン抑制試験
4時間値併用の3つの基準
1) 8時間値は1.4μg/dl以上ある
2) 4時間値が1.0μg/dl以下が35%ある
3) 4時間値は8時間値より低くなる
副腎の超音波検査
熟練したエキスパートが必要
最上級な超音波装置が要求される
7.5メガの探触子が必要である
100%術者の能力がたより
動物側の条件
1) 動かないで協力的であること
2) 腸管内にガスがないこと
副腎の超音波検査
3大利点
1) 腹部の予期しない病変
2) 副腎の形態(大きさ・形)
3) 副腎腫瘍等の転移の有無
副腎の超音波検査
・比較的陰影は低エコー性
・過形成下垂体性の両側の肥大
・腫瘍高エコー性の結節
副腎の超音波検査
・左の副腎ピーナツ型
・右の副腎ハート型
・犬:副腎厚さ6〜7mm以下
・猫:副腎厚さ4mm以下
ACTH刺激試験
・下垂体依存性を85%の確率で診断
・副腎腫瘍性を69%の確率で診断
・医原性も診断が可能
・全体では80〜85%の確率で診断
ACTH刺激試験
合成ACTH製剤 0.25mg 筋注
(コートロシン 第一製薬)
・前値及後値(1時間後に採血)
・後値が20μg/dl以上で診断
ACTH刺激試験の結論
・20μg/dl(530nmol/L)以上で診断する
・以前の倍数の基準は無視する

・死の直前の犬は20以上になることに注意
ACTH刺激試験の結論
価値はあるが正確ではない?

利点 1)治療の反応の程度が判定できる
2)医原性が診断できる
3)簡単に実施でき
欠点 1)あまり正確な検査ではない
2)副腎腫瘍性には不向き?
高容量デキサメサゾン抑制試験
・0.1mg/kgのデキサメサゾンを静注
・前値と8時間後に採血
・8時間目で前値の50%以下であれば
下垂体依存性と診断。

いろいろ検査はしてみたが?
・尿コルチゾール/クレアチニン比は偽陽性あり
・ACTH刺激試験よい価値があるが正確ではない
・低容量デキサメサゾン抑制試験は8時間かかるのが欠点
・副腎の超音波検査は熟練した術者が必要
いろいろ検査はしてみたが?
最も確実なのは注意深い禀告と身体検査?

副腎皮質機能亢進症の合伴症
うっ血性心不全
腎盂腎炎
肺動脈血栓栓塞症
疾患の再発を繰返す
感染症
膵炎
治療原則その1
臨床症状がなければ治療はしない
治療原則その2
主な不快な症状を抑える
まずは多尿、多食、多喝等を防ぐ
ことから始める
治療原則その3
飼い主が満足する臨床症状を保てれば良い
治療原則その4
中毒症状をあらかじめ告げその対策を!
治療原則その5
数値のみを追究して考え過ぎないこと
治療原則その6
あくまでも臨床症状を信頼すること!
治療原則その7
治療しなくとも平均2.2歳は生きる?!
副腎(腫瘍性)依存性副腎皮質機能亢進症
・副腎腫瘍の内科療法は難しい
・内科療法の適応となるのは下垂体依存性
・副腎皮質機能亢進症のみである?
・副腎摘出術:右の副腎の場合は特に手術は難しい。常に大きく血管に富み浸潤性である。
下垂体依存性副腎皮質機能亢進症
OP-DDD(ミトタン)
Trilostane(トリロスタン)
ANIPRYL(L-deprenyl)
ケトコナゾール(ニゾラール)
ペリアクチン?
OP-DDD(ミトタン)
・25mg/kg 1日2回 1週間?
・1/3の量の食事を1日2回投与
・毎日電話して様子を聞く!
・効果が現われたら、5〜9日間?25mg/kgを1日2回を週に2回。
・その後、数カ月で少しずづ減量。
・ACTH刺激検査でモニター
OP-DDD(ミトタン)
中毒になったら・・・
※ゆえに飼い主の方は、あらかじめ薬をもらっておくことをお勧めします。
※中毒の症状の把握は、食事の食べ方で判定します。食欲不振や多飲
 多渇の症状の判定では遅すぎることがあります。
まずはOP-DDDを中止する
1) プレドニゾロンを与える
2) 2〜3週間でPreを減量する
3) 状態によって2〜5週間の間OP-DDDを休薬する
4) 低容量でOP-DDDを開始する2.5mg/kg/週1回
OP-DDD(ミトタン)
その後2〜3年も生きれば?
10mg/kgを週2〜3回まで減量できることあり!
Trilostane(トリロスタン)
  • 最初の投与量は5kg以下は30mg、5-20kgは60mg、20−40kgは120mg、40kg以上は120-240mgを基準とする。
  • 平均的な投与量は6mg/kgであるが、2−12mg/kg,1日1回である。
  • 評価は、臨床症状、身体検査、ACTH反応試験、血液・生化学検査を中心に、投与前、10日後、4週間後、12週間後、その後は3ヶ月毎に必要となる。
  • 重度な肝疾患や腎不全、妊娠犬、出血傾向には使用しないこと。
  • 投与は1日1回、朝、食事と共に与えるが、期間は生涯投与となる。
Trilostane(トリロスタン)
  • 日本名はデソパン錠 60mg 1錠、持田製薬
  • 外国名はVetoryl 30mg, 60mg, 120mgカプセル、arnolds社
  • 注意すべきは、副腎皮質機能低下症、低Na血症と高K血症である。
Trilostane(トリロスタン)
  • 投与して臨床症状が改善してきたら、トリロスタン投与後4−6時間後にACTH検査行い、その値が、5.7μg/dl以下で0.75μg/dl以上であればコントロールは良好であり、その投与をそのまま続ける。
  • 臨床症状が改善しない又は軽減しない夜間再発する。 トリロスタン投与4−6時間後のACTH検査のコルチゾール値が5.7μg/dl以下0.75μg/dl以上であればトリロスタン投与後22−24時間後のACTHの検査を繰り返す。
トリロスタンの使用法
犬のクッシング症候群のトリロスタン使用法の
最新のガイドライン


http://www.arnolds.co.uk/
ANIPRYL(L-deprenyl)
・選択的なモノアミン酸化酵素-B阻害剤(MAO-B)である。
・人間のパーキンソン病の製剤。
・犬のPDHに有効とされる。
・最近犬の高齢の問題行動にも適用との指摘がある。
・我が国では未発売。しかし似た製剤は存在するが高価である。
・最近では、犬のPDHに行う単一の治療として L−デプレニルは
推奨されないことを指示する文献の発表あり
ANIPRYL(L-deprenyl)
・1〜2mg/kg 1日1回 早朝
・まず最低約30日間は連続投与。
・通常は1mg/kgで2ヶ月間連続投与し、
・その後、臨床症状やその他の検査の結果と総合して判定
ANIPRYL(L-deprenyl)
・あまり変化がなければ、2mg/kgに増量する。
・そして1ヶ月続けて効果がなければ、中止する。
・臨床症状と血液検査にて判定。
効果があれば・・・
・生涯の連続投与が必要となる。
・安定したら、半減(又は隔日?)等も可能のこともありうる。
我が国には選択的阻害剤(MAO-B)としては
・エフピー錠2.5
・塩酸セレギリン2.5mg1錠
・抗パーキンソン剤
効果の程は不明だが、理論上は有効?
似た製剤であるが、かなり高価な薬剤である
ケトコナゾール(ニゾラール)
・10〜15mg/kg 1日2回
・OP-DDD(ミトタン)等が無効の時、考慮するが、より副作用が強くでることがある。
・特に肝障害に注意が必要。
・コルチゾールの生産を減少する。
・但し腫瘍組織は破壊しない。
・OP-DDDとの併用は禁忌である。
・副腎腫瘍の寛解療法として?
ペリアクチン
・抗セロトニン剤
・約10〜15%に有効?
・塩酸シクロヘプタジン
・食欲増進剤であるので使用しにくいことあり

Canine Hyperadrenocorticism (Canine Cushing's Syndrome)

Canine Hyperadrenalcorticism (Canine Cushing's syndrome) is one of the most common endocrine disease in the dog. These Disease usually occurs in middle-aged it may slightly more often in female dogs. Any kind of Dog can develop Cushing's syndrome, but in Japan most common breed in poodles, Pomeranian, dachshunds (long hair), miniature schnauzers and Boxers. This disease characteristic is very gradual onset and variable clinical symptoms. Many owners misunderstand these changes is result of the aging process. Cushing's syndrome is a condition in which there is an excess of cortisol. Also this disease can be caused by treatment (e.g. prednisone) of many diseases. This syndrome is known as iatrogenic Cushing's syndrome. Clinical signs are similar to the spontaneously occuring disease. Hyperadrenalcorticism has two primary origins. One is pituitary-dependent (PDH) and other one is adrenal dependent (ADH). PDH is the most common form of Cushing's approximately 80-85% of all cases.