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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学
最も実践的な獣医療のために

ウサギの食欲不振へのアプローチ
その診断と治療法

ウサギが病気になると最初の症状として食欲不振が発現することが多い。これは猫と同じである。
猫は小さい子犬ではない、と言われるが、ウサギも小さい子犬や子猫ではない。どちらかと言うとウサギは小さい子馬である。
小さい子馬は日常何を食べているか?それが最も重要である。食欲不振へのアプローチの第1歩は食事の内容の検討から始める。
正しい食事管理とは?⇒ウサギ2.5kgにつき固形飼料(ペレット)は60gまで。干草は自由に食べさせること。
食事管理の次は、ウサギを取り巻く環境の管理について検討する。

ウサギの食欲不振へのアプローチ
チャート式ですので上から順番に読んでも良いですし、
必要に応じてジャンプしながら読んでも良いです。
まず始めに確認するところ
 ■糞便をしているか? ■糞便をしていないか?
糞便をしている
 ■少ない?小さい? ■大きい?ゆるい? ■正常な糞便である?
糞便をしていない
 ■まったくない? ■ほんの少しだけ?小さい?硬い?
糞便をまったくしていない
 始めから食事をしていない場合は別であるが、
 糞便をしていなくて、触診で塊が触れればイレウス又は毛球症として扱う。
 ■=イレウス? ■=毛球症?
※Dr. Susan Klleherによるウサギのイレウスの原因推定チャート
 イレウスの原因を推定すると、

  ストレス
  →胃腸管の運動性の低下
  →食欲不振
  →盲腸フローラの不均衡と脱水が起こる
  →クロストリジウム属や酵母菌の過剰繁殖
  →クロストリジウム属によるガスと毒の産生
  →胃腸管の痛みが発生
  →より胃腸管の運動性の低下が起こり永久的な食欲不振
  →肝臓から毒性物質やリピドージスを誘発
  →死亡
大きいまたはゆるい糞便をしている
 糞便検査(ジアルジア、コクシジウム等)→経口投与トライ
正常な糞便である
 口腔内検査→過剰症→経口投与トライ
 ショック状態?→血液検査その他→経口投与トライ
程度によってまったくない〜ほんの少しだけ小さい糞便・硬い糞便をする
 ■=イレウス?
まず口腔内検査→過剰歯 次に胃や腸の触診をする

塊状物は触知できる?
 ■大きい?硬い?
塊状物が触知できる(できればX線撮影検査にて鑑別)
 大きい→毛球症を疑う
 硬い→イレウス毛球症を疑う
X線撮影検査
 食べてないのに(24時間以上)胃に食塊あり→毛球症を疑う
 小腸、直腸に散在性にカズ陰影→腸炎を疑う
 腸管にイレウス像を認める→本当のイレウスを疑う
毛球症と診断されたら、その治療法は?
 最も重要な治療法は?
輸液療法!です

毛球症の治療法
 食事の改善
 干草の給餌
 メトクロプラミドの投与
 シサプリドの投与
 パンクレアチンの投与
 ラクチュロースの投与
 硫酸バリウムの投与
 ミルマグの投与

毛球症の予防法
 正しい食事管理
 ブラッシング
 清潔な環境で飼育すること
ウサギは飢えさせてはならない!
長期間の食欲不振は肝リピドージスとなる
糞便をしていない?=イレウス?
 イレウスで最も重要なことは、このイレウスが内科で治療するイレウスか、
 本当のイレウス(外科手術が必要)かの鑑別をすることです。

イレウス(ileus)
 イレウス、腸閉塞[症] 機械的、運動亢進性または無力性の腸管閉塞で、
 激しい仙痛や腹部膨満、糞便の排泄困難、ときに発熱や脱水を伴う。
ウサギの胃腸管の手術は、予後が悪くできるだけさけるのが得策です。
絶対的に必要な時のみ行います。
イレウスはしばしば、毛球症と間違われます。
毛球は程度の差はありますが、通常ウサギの胃腸管に存在し、
食事と毛が混ざりあっています。
通常は毎日少しずつ排泄されています。
どんな状態の時に毛が排出できなくなるか?
 ウサギが脱水状態に陥ったときや、新鮮な干草が不足したときです。
古典的?伝統的療法は有効か?
 ■イレウス状態のウサギにヨーグルトやミルクを与えるべきか?
 ■他の健康なウサギの夜間便(盲腸のフローラを含む)を食べさせることは有効か?
 ■毛球症における、新鮮または冷凍のパイナップルや
  パパイン入りのジュースは本当に有効か?

 ■乳酸菌の粉末を使用することで、盲腸のフローラを増加させて有効とはならないか?
イレウス状態のウサギにヨーグルトやミルクを与えるべきか?
 与えるべきではない。
 これらの高いエネルギーは、酵母やクロストリジウム属の過剰繁殖の原因となる。
他の健康なウサギの夜間便(盲腸のフローラを含む)を食べさせることは有効か?
 これらの便を食べるというストレスが勝り、おそらく利益がなくなるでしょう。
毛球症における、新鮮または冷凍のパイナップルや
パパイン入りのジュースは本当に有効か?

 これらの酵素でケラチンは溶解するが、主な蛋白構造である肝心な毛自体は溶解しない。
乳酸菌の粉末を使用することで、盲腸のフローラを増加させて有効とはならないか?
 まだ仮説の段階で有効な臨床例は発表されていません。論争中。
重要な治療法
 ■疼痛の緩和療法 ■胃腸管の運動性の回復 ■その他の治療法
疼痛の緩和療法
 フルキシニン・メグルミン1-3mg/kgSQまたはIM、1日1-2回。腎不全の際には使用しない。
 胃腸管の疼痛療法には、サルファサラジンを80-120mg/頭を1日2-3回与える。
胃腸管の運動性の回復
 シサプリドとメトクロプラミドを併用する。各々1.0-1.5mg/kg、1日2回。
 完全な閉塞には使用しないこと。
その他の治療法
 食欲を刺激するために輸液と共に、
 ビタミンB複合体、シプロヘプタジンの投与も有効と思われる。
 ■腸性毒血症の予防と治療
 ■ガスの生産の減少
 ■胃腸管の運動性の刺激
腸性毒血症の予防と治療
 コレスチラミン(抗コレステロール血症治療薬)2gを20mlに溶いて、
 8時間ごとに経口投与する。
ガスの生産の減少
 ジメチルポリシロキサンを1/3-1/4錠を水で溶いて、
 8時間ごとに10-20mlを経口投与する。
胃腸管の運動性の刺激
 1日数回、やさしく腹部のマッサージをする。

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