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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr.小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学
2021.2.1

犬猫の誤飲・誤食における催吐処置について

<参考>催吐処置同意書見本(PDF)



近年誤飲・誤食における催吐処置の必要性が重要になりつつあるようです。なぜなら飼主は何かを間違って食べたら、まず吐かせられないのか?と考える傾向にあるからです。これはインターネットの影響でしょう。よって動物病院はあらゆる努力をして、これに応えられるように努めることが求められていると思います。

事実私たちの動物病院では、44年前から24時間緊急診療(365日年中無休)で診察していますが、開業当時はおろか、20-30年前では、殆どこのような症例はありませんでした。

これは6-7年前からの傾向で、特に昨年からはStay Homeと関連があるように思います。猫こそStay Homeが原則ですが、どうもStay Home、Stay Safeが動物関連では結びついていないように思います。伴侶動物の安心・安全のためにより多くの啓蒙が必要だと思います。

また10数年前は誤食に起因する事故例は殆どが犬でしたが、近年はネコノミクスによってか、猫が増加傾向にあります。救急医療の現場においてはよく遭遇する例となっています。

私達の動物病院では、誤嚥・誤食症例は、犬は週に4-5例(年間約220例)、猫は週に2-3例(年間130例)を経験しています。特に夜間診察の動物病院ではそのようです。多い場合は1日に3例もあります。

44年前の開業当時の記憶では、犬猫を吐かせるためには、ランパン(Rompun、キシラジン)を使用していた記憶があります。30-40年前には、犬猫に吐かせるという発想は、獣医師、飼い主、共にあまりなかったと思います。

10年程前には犬で吐かせるために、オキシドールを使用している動物病院が約半数ありましたが、さすが現在ではほとんどないと思います。それだけ催吐剤の使用法に慣れてきたということだと思います。

20数年前頃から、犬猫が家族の一員となり、チョコレート、ネギ、タマネギ等の毒性が知られて来ました。これは明らかにインターネットのおかげだと思います。当時の記憶を思い出すと、私が犬の雑誌にタマネギ中毒の記事を書いた所、偶然、同じ雑誌の広告のページに、犬の滋養強壮ために、タマネギ入りのサプリメントを!の記載があり、問い合わせがあり少し困ったことになった記憶があります。 

犬の誤嚥・誤食は、チョコレート中毒、タマネギ中毒(ガーリックも含む)が30-50%ですが、人間用医薬品(アセトアミノフェンーバファリンやゾルビデム酒石酸塩)や小さい玩具、手袋、柔らかい小物、紐、楊枝、タバコ、殺虫剤、竹串、鶏の骨、肥料、グレイプ・レーズン、キシリトール中毒等もあります。最近はマスクもあります。

起こりやすい犬種は、プードル、ダックスフンド、ミニチュアピンシャー、キャバリア、ボストン・テリア、フレンチブルドッグ、ケアンテリア等で比較的に小型犬から中型犬が大多数です。これは性格に関係しているようです。

猫はチョコレート中毒、タマネギ中毒(ガーリックも含む)以外にも、柔らかいオモチヤ、紐状異物、又は短い紐、ティーバッグ、ユリ科の植物、エッセンシャル・オイル、洗剤等の家庭用洗剤、犬用のノミ、ダニのスポットオンの誤使用等があります。

現在の所、犬猫用の催吐剤としての薬剤はありません。よってまずはそのところを飼主に説明する必要があります。やむを得ず、投与法や用量を変更することにより嘔吐作用が生じる薬剤を、工夫して使用することを説明します。できれば書類で説明し、同意書を作成して同意を得る(署名)ことが望ましいことかもしれません。参考まで私たちが使用している同意書を記載します。この同意書を使用する例は、比較的まれで、高齢、幼若、衰弱の状態において、飼い主と相談の上の、同意の上に行う場合の同意書です。要するに、吐かせる行為に危険性もありうると言う場合に、再確認の意味で同意して頂く文章です。

<参考>催吐処置同意書見本(PDF)

催吐剤を使用する前に、考えていかねばならない各種の問題があります。最も重要なことは、意識のある犬猫のみに使用(嚥下反射がある)できることである。理想的な催吐剤としては、安全に使用できる、嘔吐する確実が高い、投与法が易しい、比較的に安価で、作用時間が早い等であるが、これには、その動物の体重、いつ食事をしたか、投与量、年齢、基礎疾患の有無、過去の手術歴等の問題も考慮する必要があります。

嘔吐を解剖学的に考えると、食道は消化管で唯一、横紋筋(意識して動かすことのできる筋肉)と平滑筋(自分の意志ではコントロールできない筋肉)からなる器官で、犬猫は人間よりも横紋筋の割合が多いので、意識的に吐き出すことができると考えられています。

また犬猫では、食道を構成する筋組織に違いがあり、犬と反劒動物は食道の全域が横紋筋であるのに対し、猫、人間、馬は胃に近い側の1/3から半分程度が 平滑筋で、残りは横紋筋です。

まず知るべきことは、もし催吐がうまくいった場合にでも、通常胃の40~70%の内容物が吐き出るとされ、100%排出されることはありません。そして、その吐き出た内容物の臭いを調べ、消化しているか、その色は、泡は、と調べ、飲み込んだとする物質を発見できれば、ラッキーです。

しかし、重要なことは、吐いたからといって、他に何もする必要がないと決めつけてはいけないということです。何を摂取したかによりますが、吐いた後にさらに何か行うことがないかを検討する必要があるかもしれません。例えば吐いた後に、輸液、胃粘膜保護剤、活性炭、解毒剤、緩下剤、利尿剤等が必要であるかどうかです。

これら犬猫に嘔吐させることは時に重要で、例えば最近ではこのコロナの状況で、マスクを食べた例も見受けられ、通常の方法で嘔吐が出来ずに、麻酔して内視鏡で取り出したとの例(開腹手術は最悪の状態?)もあるようですが、うまく吐かせればそれで済む話ですから、その行いには十分に学習が必要と思われます。

私の動物病院の過去の症例では、誤飲・誤食の症例の犬の場合は約90-95%以上は、吐かせて対応できました。猫でも80-85%が対処できます。これは一般的に言われている70%前後の確率で吐かせる、より明らかに良い結果です。いろいろ工夫することが必要で、究極には、吐根シロップが使用できるかによります。もし吐根シロップが使用できないと、その確率は犬猫で、約70-80%になると思います。 

●誤飲・誤食してから吐かすのに何時間まで有効か?
理想的には1時間以内であるが、2-3時間以内なら適応時間内、4-5時間以内なら誤飲・誤食の種類や胃の内容物にもよりますが、行う意義が在り得ることもあるので、その可能性を飼い主に告げて決めると良いでしょう。事実チョコレートやタマネギ等の場合は、5-6時間後でも汚物にかなりの臭いを感じた経験があります。

●最後に食事したのはいつか?胃内の食渣の量は?
胃の一番吐きやすい状態は、胃が空の時である。まずはこれを確認しますが、不確かな場合が多いでしょう。特に胃が空の場合には、催吐処置の後に、水分を与えるとより吐きやすい環境となります。

通常犬猫は胃からの排出時間は2-3時間です。満腹時は吐きにくい状態にある。犬猫の胃の2/3は骨格筋(骨格筋は組織学的には横紋筋で、内臓筋が平滑筋)で構成されているので、よく吐く、吐きやすい状態である。

●何か吐きやすい状態にするには何を行えばよいですか?
催吐剤の種類や性格にもよっても多少違うが、一般的には犬の場合は、催吐の処置後に軽く運動させることです。犬は早歩き(Brisk walking)、猫は回転椅子(Chair spin)で30-60秒回す。また空腹時には催吐処置後にすこし何かを食べさせると吐く刺激になることがあります。普段から食欲のある犬(大食い、chow hounds)には、数切のパンを注意しながら食べさせると吐く刺激になることがあると言われています。通常これらのことは初回の処置で嘔吐しなかった場合に行われることがあります。

●吐くための、精神的な要因はどの程度関係しますか?
このことはあまり強調されていない面があるようですが、大いに関係していると考えられています。これは上記の、何か吐きやすい状態にするには何を行えばよいかと、重複する部分でもありますが、催吐剤の処置後の対応となります。特に一部の猫の場合はそうであります。

問題は飼い主の目の前で吐かせてその様子を見せたいが、特に猫ではこれが障害にあるばあいもあります。吐く前のあくびが、飼主の顔を見るとピタッと止まり、吐かなくなった経験があります。ゆえに特に猫では、吐いている動作は動画等で見せたりすることも可能な時があるでしょう。もしどうしても強い希望で、飼い主の目の前で吐かせる場合には、処置後飼い主にはできるだけ、無関心を装う、決して名前を読んだり、一緒に遊んだりさせてはなりません。しかしトラネキサム酸の静注の場合は例外で、この場合は、飼い主の前でも問題なく、吐いてくれます。これは急激に嘔吐作用が起こるためと思われます。

犬猫共に吐く前には、よくあくびをしますが、何か別に関心事ができると、あくびも止まり、嘔吐も止まります。処置後には、体を動かす(酔わせる?)こととリラックス させることです。特に猫は催吐剤の処置後に、柔らかい絨毯のような心地よい場所の上に置くと吐きやすくなると言われています。

●X線検査はどんな時に必要か?
紐状異物(猫では必ず口腔内検査を行う多くが舌の下にある後臼歯に糸がある)、触診等で閉塞を疑える時、金属等のX線検査不透過性の異物で、飲んだか不明な場合等には適応になります。閉塞像では前哨腸管の有無を調べる。ほとんどは不完全閉塞像を認める。時に飲んだ異物が入手できれば、動物の横に置いて、どの様にX線で写るか調べることも可能です。

注意すべき点としては、X線検査で確認できない異物です。これには、例えば、自身の髪毛 、布きれ、紐、紙、スポンジ、セロハン、細いプラスチック、楊枝、羽毛等いろいろあります。これらは食事の陰影の濃度と同じで、確認できないでしょう。

通常まずは胃内に食塊があるか調べます。犬猫では2-3時間で胃から消化され、胃内には食 塊があまり無いはずです。もし胃内に食塊が大量にあれば、いつ食べたのか必ず聞く必要が あります。また同時に食糞症もあるか、聞くべきです。

また不幸して催吐剤で吐かなかった場合にはX線検査にて、胃、小腸、大腸の状態を中心 に調べます。まれに食道に病変がある場合もあり、特に嘔吐ではなく、逆流(吐出)が疑わ れるの場合には特にそうです。特に逆流の原因は食道に、嘔吐の原因は胃にあるからです。

●X線検査のバリウム検査の適応は?
誤飲・誤食が不確かで、通常のX線検査にて、判明不明の場合、原因が食道にある場合や、特に猫でひも状異物を疑いアコーディオンサインが不鮮明の場合、またひも状異物以外で、不完全閉塞像等を疑う時に行います。

またバリウム検査は時に治療にもなりうるとこを常に心がけることが重要である。対象物がバリウムと共に流れ出ることが多いからである。ゆえにそのタイミングや体位にも配慮が必要である。 

●腹部の超音波検査の適応は?
病歴の聴取と身体検査(特に腹部の触診)及びX線検査と共に行う場合が多く、超音波検査は特に閉塞を疑う場合には有効となる。最近は特に救急時にはAFAST(腹部)、TFAST(胸部)と呼ばれる、比較的誰もができる、手軽な方法が行われている。 

●催吐剤を使用してはいけない誤飲・誤食例は?
意識が消失している動物はもちろんであるが、すでに何度も吐いている、呼吸困難、強酸性(パイプ洗浄剤)、強アルカリ性(漂白剤)の製剤、農薬類、灯油やガソリン、一部の洗剤、突起物のあるもの、麻薬、覚醒剤など、重度な嚥下の低下、痙攣・発作、中枢神経の障害、昏睡、喉頭麻痺、石油系炭化水素(ガソリンや灯油)、ボタン電池(食道に停滞で障害)眼底内圧の上昇の例には注意を要する。

また何度も強調しますが、嚥下等に障害がある、意識のない場合には適応できない、嘔吐物が肺に入り肺炎を起こす可能性がある。吐させては行けない場合には、時に活性炭の使用する場合もある。

●併用すると吐きにくくなる薬剤は?
メトクロプラミド(プリンペラン)やマロピタン(セレニア)等の制吐剤以外にも、鎮静・鎮痛剤、抗不安剤、精神安定剤の特に2種類以上使用している場合である、代表例では酒石酸ブトルファノールのみでも多少であるが、吐きにくくなることもある。

また強心剤や、カルシウム拮抗剤、β-遮断剤、コカインも注意が必要となる。制吐剤は、吐かせる目的で、異物が完全に出た後に使用する場合もある。また強心剤や、カルシウム拮抗剤、β-遮断剤、コカインも注意が必要となる。制吐剤は、吐かせる目的で、異物が完全に出た後に使用する場合もある。

●催吐剤使用後の注意点は?
特に嘔吐後に制吐剤を使用しない場合は、その後の嘔吐の可能性を告げる、例えば帰宅時の車の中(動揺のため)や自宅にでもそうあるが、吐いても良い環境に置く。特にこれば数時間後の嘔吐も起こりうるトコンシロップの場合はそうである。また胃の刺激の緩和のために、神経質な動物には粘膜保護剤を使用することもある。

●上手く吐いた後は、どの様に飼主に説明するか?
吐いたものを、必ず飼い主に見せて、説明します。その際にできれば、飼い主に写真を取ることを勧めた方が良いでしょう。動物病院ではあとあとの為に、吐いた物質は必ず写真で記録します。また目的の物質は吐いた時は、その処分をどうするかも飼い主に聞きます。

●家庭で吐かすことは出来るか?
まず行えることは誤飲・誤食の直後であれば、口の中を良く水で洗うことを勧める。次にスポイト等で、水を飲ませることです。その後は、出来る場合は、犬の場合は、口の中に指やボールペンを喉の奥まで入れて、刺激すると、まれに吐きやすい状態にある場合は吐く場合があります。猫にも可能ですが、より難しいです。

夜間、動物病院が探せない場合には、本当に吐かせる必要がある場合のみ、犬のみですが、3%過酸化水素水(1-5ml/kg 経口)や高濃度食塩水の使用はやもう得ず行う場合もありうるが、朝になったら、必ず動物病院を受診すること。但し猫ではこれらのことは禁忌となり行いません。

一般的に言って、家庭で吐かすことはかなり難しいことです。大昔?ですが、欧米では医療に心得がある家庭では、ipecac syrup(吐根シロップ)が常備薬として備えられていたようです。何か日本の富山の薬売り「置き薬商法」みたいですね。これを人間のみならず犬猫にも使用したようです。 

●胃洗浄の適応は?
最近の傾向としては、動物が昏睡状態にある場合に、時に適用となるが、予後は難しい症例が大多数である。その理由はすでに毒物が吸収されていると考えられるからである。行う場合は、飼主とよく相談して行うこと。

●内視鏡による摘出手術の適応は?
吐きだせない異物が胃内にある場合は、適応になる場合もある。例えば人間の赤ちゃん、乾電池を飲み込んだ場合は、内視鏡で摘出するとのことです。お腹と胃を切開して、取り出すことは有り得ないからです。実際の犬猫の症例では、例え腹腔切開をしても、幽門やその周辺の小腸にある異物を手技で、胃に移動させ、内視鏡で取り出す等の可能性も考えることができます。 

●開腹手術による適応は?
猫の紐状異物等が適応になりますが、この手術時の注意点は、何処で紐が引っ掛かっているかを調べることです。普通は舌の下にある後臼歯の周辺か、幽門部の下部です。舌下の紐を手術前に切らないことです。切ると腸内に線上に漏れ出る可能性があるからです。
開腹して、腸管を完全に保護してから、舌下の紐を切ります。要するに何処かに引っかかっているから、紐が腸の蠕動によって、腸がねじれる(アコーディオンサイン)わけです。

開腹して異物を取り出して、これで終わりではありません。他の異物がないか、すべての胃腸管を十分に調べます。胃や腸に異物があれば、他の腸にもあると考えます。 

残存した異物はいつ完全に詰るのか?(閉塞するのか)予想はつきません。まれに過去に異物を飲んだ犬猫が急に、重度な嘔吐、下痢等の症状が認められ、突然として症状を表す場合があります。ゆえに病歴の聴取が重要となります。植物の種は以外と溶けない場合が多いようです。 

本来は異物等の場合には、うまく行けば催吐剤の処置で終わるが、吐かなければ外科手術と考えるのが普通であろうが、これは考え方の問題で、本来この異物は、外科手術で摘出するものだが、うまく行くと、ラッキーならば、吐きだし、外科手術しなくてもすむ場合もあり得ると話しておく方が自然の場合もあります。 

●催吐剤を使用しても吐かなかった場合は?
状況によりますが、入院しての対処が必要でしょう。食欲、元気等の容体の観察が重要です。輸液等の対象療法が中心ですが、活性炭の使用も適応になる場合もあります。またチョコレート中毒やネギ、タマネギ類の各の毒性に対しての対応もできます。また強肝剤、胃粘液保護剤も適応になる場合があるでしょう。もちろん状況によって血液検査も必要となります。

●血液検査が必要な状況はどんな時ですか?
容体が安定していない場合等、CBCにて全体の評価(各臓器の働きの関係)と各臓器の評価(例えば、肝臓、腎臓、膵臓等)を調べます。貧血の有無も解ります。また特定の毒物例えば、犬のキシリトール(甘味料)中毒の場合です。これらの中毒には、低血糖を始めとする、肝毒性が予測されるので容体によって随時調べる必要があるでしょう。治療はブドウ糖の投与です。猫もキシリトールは危険です。 

人用のケーキ、お菓子(犬用でも安心できない?)、シュガーレスのガム、歯磨き粉に含まれているものがあります。10kg当たり1gで重篤な低血糖が起こることがあります。また10kg当たり5gで重度な肝臓障害が起こることもあります。 

犬はキシリトール摂取後に、強いインスリン分泌促進作用がみられ、そのインスリンの作用によって、逆に血糖値が急激に減少し,低血糖症状となります。この作用は人間では 起こりません。ゆえに人に安全で犬には危険な食品の代表例です。

人間で使用されている、甘味料の主なものにアスパルテームやスクラロースがありますが、これらは犬猫にはまだ毒性は認められていないようです。しかしエキゾチック・ペットには注意が必要との意見もあります。 

あまり症例はないでしょうが、猫で注意が必要なのは、人間用のサプリメントで、アルファリポ酸(αリポ酸)です。人間では糖尿病や肥満対策として使用されているようです。これはわずか体重1kg当たり13gで、猫で毒性が現れます。これはチオクト酸とも呼ばれるビタミン様物質です。犬では猫の5倍で中毒症状が現れると言われています。

●誤飲・誤食の予防のための飼い主へのアドバイスは?
留守番中はできるだけゲージに入れること。これにはトレーニングが必要となります。 いわゆる、クレイトトレーニングです。散歩中は、拾い食いしないように、リードを短くして、必要に応じて口輪を装着する。

特に成長期にガツガツ食べる場合は、頻回投与を心がける。お腹が空いている時に誤飲・誤食が起こりやすい。常に水分を与えること。猫の食餌回数は本来は5-6回なので、少量頻回を心掛けること。この少量頻回が犬より猫の誤飲・誤食が少ない原因の一つとも考えられます。誤飲・誤食の症例の多い年齢は1-3歳です。特にこの期間は注意が必要です。

飼い主が知るべき知識として、覚えて良いことは、特に犬猫の幼児や高齢に於いて、柔らかい、軽い、厚みある、嵩がある食べ物、パンやナンを細かくしているが、連続して食べさすと、簡単に食道に詰まり、呼吸困難となり倒れ、意識喪失となり死亡することがあります。これはまれに起こります。これは動物病院でも起こり得る話です。 そんな場合の救急処置は?比較的簡単です。喉の奥まで指や先が丸いペンを入れるだけで、数秒で戻どうりの犬猫になります。要するに詰まった食事を胃の中に押し込むわけです。これを知らないと隣に動物病院があっても間に合いません。 

●催吐剤の作用機序は?何処に作用しますか?
催吐剤を使用して、嘔吐を誘発する方法には、2つの方法があります。胃に直接刺激を与えて、吐かす局所的な方法と、脳内の化学受容体トリガーゾーンの嘔吐中枢を刺激して、吐かす方法です。

犬の場合、化学受容体のトリガーゾーンはドーパミン受容体によって媒介されています。猫は対照的に、彼らの化学受容体トリガーゾーンは主にαアドレナリン受容体によって媒介されるので、αアドレナリン作動薬を使用します。この理由がアポモルヒネが猫に効かない?効きにくい?理由です。

誤飲・誤食を排除するには?催吐剤の使用が原則

化学受容体のトリガーゾーン
↑       ↑
αアドレナリン作動薬    ドーパミン受容体
猫        犬


局所 VS 中枢、の刺激にて嘔吐を起こさせる。
・局所―一般的に直接、胃の粘膜に刺激する
・中枢― 猫はαアドレナリン作動薬、犬はドーパミン受容体。

 

 <犬の場合>
犬の催吐、私のお勧めの方法
1) 5-6kg以下の犬にはトラネキサム酸の静注です。6-7kg以上の犬には、アポカインの筋注、容量は0.004ml/kgです。これで吐かなければ、30-60分以上経過をおき
2) 吐根シロップ(2ml/kg)を経口投与(入手出来れば)します。その後同量の水を投与します。これでも吐かない場合は、1時間以上の経過をおき
3) 再度のアポカインを0.005ml/kg静注を行います。 

犬は、アポカイン®皮下注30mg、トラネキサム酸、吐根シロップ、キシラジン等を使用することができます。

アポカインの使用法は文献的には、0.02〜0.04 mg/kgを静注又は筋注、高容量の文献では0.08-0.1mg/kg、筋注、皮下注等いろいろです。静注は確実に静脈に入れば、吐くようです。筋注は容量が少量のため、筋肉に入っているか不確かな面があります。微量なので、注射器はロードーズの0.3ml用を用います。この筋注の問題点は確実に薬剤が筋肉に入るかで、筋膜に入ると吐かないと思います。

アポカイン®皮下注30mg, 3ml(すなわち1ml=10mg)5kg以上の犬、0.04mg/kgを筋注
例えば 5kgの犬0.004ml×5=0.02ml 筋注又は静注
10kgの犬で0.004ml×10=0.04ml 筋注又は静注
15kgの犬で0.004ml×15=0.06ml 筋注又は静注
20kgの犬で0.004ml×20=0.08ml 筋注又は静注 

殆ど使用する必要がないが、嘔吐後等に元気ない等、必要があればナロキソン0.02mg/kg 静注(0.01~0.04mg/kg静注)で覚醒させる 

犬のトラネキサム酸の使用法
動物用のトラネキサム酸(バソラミン注)1ml中に50mg含有、が使用しやすい。1kgにつき1ml(50mg/kgで使用すれば)と覚えやすいからである。しかしこの薬剤の重要なとは上限量を知ることである。

このトラネキサム酸の使用には考えられている上限があります。それは総量750mgとの記載があるようですが、この用量でも問題が起こっているようです。例えば、50mg/kgで使用した場合は、15kgまでとなりますが私はお勧めしません。

比較的に安全に使用できる総量は最大500mgまでと思います。ゆえに50mg/kg用量だと10kgまでです。要するにこのトラネキサムは大型犬には使用しないほうが無難と言うことです。しかしこの容量でも副作用反応(DIC等)が認められているようです。しかし、350mgなら、すなわち7kgなら50mg/kg用量で問題となった報告はありません。

ゆえに私の場合の使用量は、50mg/kg用量にて、6mlまで、即ち6-7kgまでの犬で、 トラネキサム酸(バソラミン注)を用いると言うことです。高齢、幼若、血液凝固関連の病気、衰弱ぎみ以外の犬で、過去1000例以上使用し問題が起きたことありません。

このトラネキサム酸(バソラミン注)の使用に関しては、原則的に使用する際には留置カテーテルを設置するが、私の場合は、5―7kg以下の犬の場合は、5ml用の注射器にて26G×1/2、SB(静脈用)の針(3-4kg以下)、又は23G×11/2 SB(静脈用)の針(5-7kg)注入して(4-5秒にて)います。RB(皮下、筋肉用)は使用しにくいことがあるので、SB(静脈用)の針を使用します。

留置しない欠点は、その後の同量の生食等の輸液を入れることができないことと、その後何か異変(散瞳、低血圧、痙攣、発作等)が起こった場合に対処しにくいことですが、 上記の容量で使用する場合は、不合理は経験していません。しかし少しでも不安な要因がある場合には、留置が必要です。

ゆえに7kg以上の犬の場合はアポカイン®皮下注30mgを使用します。また若齢犬(2-3ヶ月)の場合は、トラネキサム酸の静注量を30mg/kg(但し通常この用量だと1回しか嘔吐しない?)とした方が安全に使用できます。

50mg/kgの静脈注射・・5kg以下の犬、直接5mlポンプで急速注入
問題がありそうな犬と疑われた場合に、飼い主の同意を得て行う場合は、トラネキサム酸の50mg/kgの静脈注射・・留置カテーテルを設置し、まずは生食等をトラネキサム酸と 同量程入れて留置が確実かを確かめ、その後トラネキサムを急速に静注する(約1mlを1秒位)、その後同等の生食等を注入する。総量最大500mg以上は使用しないこと。死亡例が報告(静脈血栓栓塞症となりDICが起こる)されています。留置カテーテルはそのまま、嘔吐後に何か副作用等あれば、そのまま対応できます。

もし10kg以上の犬で、どうしても薬剤の関係で、トラネキサム酸を使用する場合は、 22Gの留置カテーテルにて、より急速に約1.5mlを1秒位で入れて、その後10mlの 生食を急速(約1mlを1秒位)に入れます。これは20-30kgの犬でも同じです。これで吐く(1-2回のみ)こともあります。要するに容量の問題と言うより、どれだけ早く、トラネキサム酸が体内に入るかの問題と考えてください。

犬の吐根シロップの使用法
犬においてはこのトコンは、容量依存的に催吐作用を起こすことが知られている。この薬剤にも上限があり、考えられている総量で15mlと考えられているが、これは人間の投与量から推定されたようであるので、参考程度かもしれない。 

この吐根シロップの一番の問題点は現在入手が難しいことです。インターネットの個人輸入代行でも、過去は入手可能でしたが、現在はできないようです。しかしながら動物病院専用の海外のVeterinary Supplyに問い合わせると、いつもではありませんが、入手できる場合があります。

私の動物病院では、誤食の症例で、犬の場合は約90-95%以上の割合で吐かせて対処できました。猫でも80-85%が対処できます。これは一般的に言われている70%前後の確率より明らかに良い結果です。これにはいろいろ工夫する、ことが必要で、究極には、吐根シロップが使用できるかによります。もし吐根シロップが使用できないと、その確率は犬猫で約70-80%になると思います。

 

<猫の場合>
猫の催吐、私のお勧めの方法

1) メデトミチンの0.03ml/kg、筋注(静脈も可能)を行う。吐く目的を終えたら、覚醒のため、アンチセダン(1ml中、5.0mg)を0.06ml/kgを筋注する。覚醒が悪ければ、0.03ml/kgを追加する。本来猫には覚醒が必要となる。
2) メデトミチンで15-20分経っても吐かない場合は、トラネキサム酸(バソラミン注)を使用します。容量は、1kgにつき1.5ml(75mg/kgで使用)します。犬の1.5倍量で使用します。重度の鎮静状態であれば次の3)に移行します。
3) トラネキサム酸の使用でも吐かない場合はアンチセダンで覚醒後、1時間後に吐根シロップ(入手出来れば)を使用します。

猫にはαアドレナリン作動薬を使用する。アドレナリン作動薬は化学受容体のトリガーゾーンを刺激して中枢性嘔吐を刺激することで嘔吐作用します。猫にはメデトミチン(ドミトール)、キシラジン等のαアドレナリン作動薬が使用できますが、最近の研究では、メデトミチンの方がキシラジンより吐く確率がわずかに高いようです。またトラネキサム酸も使用できますが、量によりますが犬の1.5倍量使用しても30-40%ぐらいしか吐きません。吐根シロップ(IPECACUANHA)を使用すると殆ど吐きます。
メデトミチン(ドミトール、1mL中1.0mg)の筋肉注射・・・・0.04ml/kg(40μg/dl/kg) 

猫の場合は鎮静が強いので、殆ど必ず拮抗剤を使用する。拮抗剤としては、アンチセダン(1ml中、5.0mg)を通常はメデトミチンの半量、0.02ml/kg( 0.02-0.04ml/kg)を筋注すると5分で覚醒する。またヨヒンビンも 0.11mg/kg IV, 0.25-0.5mg/kg SQ, IM.で使用できる。

猫における、吐根シロップの使用法
猫の吐根シロップの使用には多少のコツはあります。味は甘いが後に苦味があるので、犬のように口から飲ますわけに行かないからです。特に無理してそのまま投与すると舌が麻痺することがあるようです。まずは4-6フレンチサイズの栄養チューブを使用します。鼻に一滴局所麻酔(ベノキシール)を滴下し、予め胃までの長さをチューブで計り、何処まで入れるか予測をして、鼻に入れ、吸引したりして確かめ、まずは吐根シロップと同量の水の半量を入れて再度食道や胃(胃の手前が理想的)にあるか確かめます。問題なく食道や胃に入っていることを確かめて、その後に吐根シロップを3.3ml/kgを経鼻チューブで入れます。その後残りの水の半量を入れます。すなわち吐根シロップと同量の水を入れるわけです。あまり多い水の投与は、誤嚥物質を腸に押しやるおそれがあると考えられている。すると10―15分で 1回目の嘔吐が始まります。通常3回は吐きますが、吐く量は、2回目は半量とだんだん少なくなります。まれに吐くのに時間がかかる(5-10時間後)こともあります。

キシラジン(Xylazine)の容量は、適応量は1-3mg/kg, IMであるか、催吐剤を目的としてのキシラジンの使用量は、キシラジンの筋肉注射,0.5mg/kgです。使用量としての他の報告は、0.4-0.5mg/kg IM,IV, 0.5-1mg/kg IM、0.44mg/kg, IM,IV等いろいろです。妊娠の猫は禁忌となる。また高齢、糖尿病、肝臓病には注意を要する。3ヶ月以下の猫には使用しないのが無難である。

吐根シロップ、催吐剤イペカック(トコン)Ipecacuanha
トコン(吐根)は南アメリカの先住民の間で古くから催吐剤としてやアメーバ赤痢の治療に使用されていた薬草です。種小名の「ipecacuanha」は、トゥピ族の「吐き気を催す草」を意味する現地名をポルトガル語化したものです。

諸外国では誤飲時の応急処置用としてトコンシロップが家庭に常備されていたが、日本ではツムラから2002年11月26日に発売されたが、その約9年後の2012年1月11日に販売中止になっている。米国では古くから使用されていたが、最後まで販売を続けていたHumco社とPaddock Laboratories社の2社が原材料の不足と生産コスト上昇のため2010年に販売中止となっている。 

適正使用この製剤は指示された通りにのみ服用することが重要です。意識のない犬猫には与えないでください。また製品は、牛乳、乳製品、炭酸飲料等と一緒に使用しません。  

 

 

日本動物病院福祉協会(JAHA)の獣医内科認定医 小宮山典寛 2021.2.1
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