アクセスカウンター アクセスカウンター アクセスカウンター From2013.11.13


http://www.pet-hospital.org/

all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

三鷹獣医科グループ「武蔵野動物・レーザー治療センター」

武蔵野動物・外科センター

武蔵野動物・外科センターTOP//三鷹獣医科グループご案内
武蔵野動物・救急救命センター//武蔵野動物・CTセンター//武蔵野動物・レーザー治療センター


◆ 犬(主にダックスフンド)の椎間板ヘルニアについて ◆

犬の椎間板ヘルニアについての質問

犬の椎間板ヘルニア

質問1.椎間板ヘルニア(Intervertebral disc Diease)とは何ですか?

この病気は椎間板(髄核)の物質が、脊髄を圧迫するため、後肢の両側が麻痺して歩けなくなる(俗に腰抜け、後ろ足の両方をだらりと引きずる状態)ことを言います。脊柱管内にて椎間板の物質(脊髄を圧迫している)があるために、起こる病気で、その治療にはその物質の影響をなくすことです。外科療法は、その物質自体を取り除くために行います。

↑このページTOPに戻る

質問2.なぜこのような病気が起こるのですか?

椎体間にある椎間板は、内部部分の髄核と外部部分の線維輪から成り立ちますが、それらはヒアルロン 酸,コンドロイチン硫酸、グリコースアミノグリカン、コラーゲン性(及び非コラーゲン性)蛋白等が含まれていて、椎間板はクッションの役目、すなわちショックアブソーバーとして働きます。これらの椎間板が、遺伝的な問題や、加齢の過程や、外傷にて、変性を起こして、損傷や傷害を受けるようになる。すると椎間板の成分が脱出して、脊髄または神経根が圧迫されて、ヘルニアが起こります。

↑このページTOPに戻る

質問3.どのようにしたら予防できますか?
この病気を予防することは、犬種による、先天的な素因がありますので、その該当する犬種は一般的に言ってむずかしいと言われています。しかし、この病気を知って早く早期発見すると、良い結果にむず びつくことがあります。その起こりやすい犬種を飼育している飼い主の方は、以下のいくつかの注意事 項を注意していれば、発症を遅らせることができたり、より重度な状態になることを避けることになる可能性はあります。それにはまずは、無理な運動を避けること(特に腰に負担がかかる運動、立たせる 事など)、それと肥満させないことです。そしてまた交通事故等の外傷を防ぐことです。ゆえに、普段 からしつけを良くしておくことが重要と思われます。またなによりも重要なのは、すこしでも腰の状態が悪そうと思ったら、その時には安静を保ちつつ動物病院に行くと言うことです。またこの病気の発症 や予後は、はかなりその犬の性格にも関係しています。お茶目や、聞きわけのない犬は、その後の安静がなかなかできない場合も考えられますが、そんな場合は薬剤を使用して安静を保つこともあります。もし可能であれば、ときどき後肢の足先を後ろにそり返して1-2秒以内にもどるか?または後肢の足先 を持っても嫌がらないか(正常では足先を持つと足を振る)を調べると良いでしょう。獣医師はこの病 気を疑う場合には必ずこの検査(固有知覚反応)を行います。

↑このページTOPに戻る

質問4.起こり易い年齢はありますか?
いろいろな年齢で起ります。特に2~6歳が起こり易いのですが、大体1歳から12歳ぐらいまでは起 こると考えた方が良いでしょう。

↑このページTOPに戻る

質問5.椎間板ヘルニアの類症鑑別診断する病気は何ですか?
これらの鑑別は、病歴の聴取、臨床症状による違い、神経検査による部位の推定や、X線検査をはじめとするCT,MRI等の画像診断等で、鑑別します。似たような症状の病気には、

脊髄への外傷……

交通事が最も多いが、咬傷、落下、転倒、障害物等、によっていろいろな程度の外部 や内部からの圧迫によって起こります。骨折や脱臼等もその程度によって、その傷害 のあった部位に起こります。覚えるべきことは、まれに脊髄の外傷から、かなり経過 をしてから症状が出る場合があります。これは持続的な不安定性の結果として起こる と推定されます。

骨折……

外部からの圧迫によるのが殆どですが、内部の圧迫でも起こる場合があります。X線検査等の画像検査によって診断できます。

腫瘍……

比較的高齢犬、7歳以上から疑い始めるので、椎間板ヘルニアのタイプ1の発症年齢である、3~7歳とはあまりリンクしませんが、タイプ2の場合は、発症年齢が6~8歳なので、まれではありますが、疑う必要もあるでしょう。問題は比較的に急性の発症の経過の例で、これは腫瘍による脊髄の圧迫以外にも、腫瘍があるがために、脊髄の腫脹、虚血、出血の結果によって急性の脊髄機能障害が起こる場合があることを知るべきことである。ゆえに症状は急性から慢性の経過までいろいろであるが、その症状は侵されている脊髄の程度によります。最終的にはCTやMRIの画像診断が有効な手段となります。

椎間板脊椎炎……
(Diskospodylitis)

若年性例から中年齢の大型犬で、雄が多い、これは椎体周囲の感染症である。単一の病巣であつたり、複数の部位に認める場合もある。通常X線検査で診断が可能である。多くは脊椎に痛みを生じる。また発熱も認められる。よく調べると椎体の周辺の筋肉が萎縮している場合が多い。よく調べると、慢性の感染症(皮膚系、尿路系、前立腺等)の病歴のある場合や、数回の免疫抑制剤の投与歴のある犬に多いものである。

線維軟骨栓塞症……
(Fibrocartilaginous embolism)

これは血管性の病気で、最も急性に発症しますが、48時間を経過すると、あまり進行はしないようです。また約70%の症例が痛みを伴わないものです。臨床症状で特徴的であるのは、ときどき症状が両側性でなく、片側性に現れることです。すなわち、片方の脚のみに症状が現れます。
この病気は主には、非軟骨異栄養症の1-7歳の大型犬(ジャーマン・シェパードが好発犬種、グレートデン、ゴールデン・レトリーバー、アイリッシュ・ウルフハウンド等)、超大型犬の成犬に認められる病気ですが、中型犬(ミニチュア・シュナウツァーが好発犬種、シェトランドシープドッグ等)や、どきどき小型犬や、まれに猫にも認められることがあります。
軟骨異栄養症の犬は ミニチュア・シュナウツァー以外はまずは起こらないと言われています。日本でとりわけ多いダックスフンドの椎間板ヘルニアに似た症状で、線維軟骨栓塞症を疑いたくなる症状にはまれに遭遇しますが、線維軟骨栓塞症のミニチュア・ダックスフンドの確定診断での文献の報告はいまだありません。
帯広畜産大学での2005年の報告において、唯一小型犬の軟骨異栄養症の症例で、シーズーがMRIで疑う所見のみならず、確定診断(病理検査)された発表があります。これが世界で1例目の軟骨異栄養症の小型犬の線維軟骨栓塞症の例のようです。
この病気の多くの犬は2週間以内に回復(70%)が見込まれますが、回復までに4週間を要する場合も約10%あります。しかし麻痺が残る場合もあります。重度な例ではホルネル氏症候群(眼が腫れて見える、瞳孔縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥没、第三眼瞼突出等)となる場合があり、もし重度な四肢麻痺が併発すると回復の見込みが望めなくなります。
上腕膨大部か腰仙膨大部 (この部位最も多い)発症します。X線検査では正常な所見です。通常の診断はMRI検査、犬種、症状と合わせて診断します。この病気の有効な治療はあまりありません。 それゆえに(看護とリハビリティションが治療のポイントとなります。発症後24時間以内なら、静脈用のプレドニゾロン(MPSS)での治療も有用との報告もありますが、24時間以降は効果が望めないとされています。

変性性脊髄症……
(Degenerative myelopathy)

中年令の発症が多く、後肢の不全麻痺と運動失調があるが、無痛性(触診しても脊椎を痛がらない)なのが特徴で、後肢はUMN症状(腰仙部が原因の場合はLMN症状がでる、約10%?)で、部位はT3-L3の病変を示します。経過は長く、半年から1年かけて悪くなります。ジャーマンシェパード、が最も多発しますが、シベリアンハスキーやコーギー種のペングロープウェルシュ・コーギーも発症しやすい犬種です。通常は対称性な不全麻痺の症状を示す。



↑このページTOPに戻る

質問6.この病気の起こりやすい犬種はありますか?

好発犬種は、ダックスフンドが一番多く、日本ではこの病気の起こる90%以上は ミニチュア・ダックスフンドです。このダックスフンドにおける椎間板ヘルニアは他の犬種より、12.6倍起こりやすいと報告されています。

またダックスフンドが生涯において、この椎間板ヘルニアを起こす確立は程度の差はあれ、19-24%の確立との報告もあります。犬全体としての椎間板ヘルニアの発症率は2%です。理由は多く飼育されているからです。

中国の北京では狆が多く飼育され一番多く見られるとのことです。このタイプⅠの椎間板ヘルニアは、軟骨異栄養症(軟骨が作られるとき時に他の犬とは違う過程を得る)の犬に主に起こります。

このダックスフンドのような軟骨異栄養症(Chondrodystrophic)は、ダックスフンド以外では、ペキニーズ、ビーグル、シーズー、アメリカン・コッカースパニエル、ミニチュア・プードル、フレンチ・ブルドッグ、イングリッシュ・ブルドッグ、ラサアプソ、ウエリッシュ・コーギー、パピオン、狆、パグ、バセット・ハウンド、 キァバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ジャック・ラッセル・テリア、ピジョン・フリーゼ、チベタンス・パニエル等と報告されていますが、最近では、これにチワワ、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウツァー、ポメラニアンも軟骨異栄養症の犬に分類する臨床家もいます。

この軟骨異栄養症の多くの犬は脚が短いのが特徴ですがすべてではありません。 まれに非軟骨異栄養症の大型犬の犬でさえも、この椎間板ヘルニアが認められることがあります。


↑このページTOPに戻る

質問7.どのようにして診断するのですか?
病歴の聴取……犬種、病歴、脊椎痛、発症の年齢も考えます。
臨床症状………不全麻痺から完全麻痺まで、急性から慢性までいろいろです。
神経検査………骨の病気(骨折、骨髄炎等)か、神経の病気かを鑑別できます。
画像診断………X線検査、脊椎造影、CT検査、MRI検査

病変の部位の推定、痛みの程度、症状の程度等が推定可能です。 X線検査をはじめ、もし手術をする場合には部位の特定、左右どちらかの判定のためCT,MRI脊髄造影等の画像診断等が必要です。以上の結果から、前記した、類症鑑別をした後に、診断を下します。

単にダックスフンドの腰が立たない、ふらふらする、後肢を引きずるから即、椎間板ヘルニアとは言えません。多くは椎間板ヘルニアですが違う場合もあります。

↑このページTOPに戻る

質問8.予後の判定にはどのような検査が重要ですか?

とりあえずは、神経の検査が最も重要です。特に後肢に痛みを感じるかが重要となります。深部痛覚(後ろ足 の指を鉗子で摘まんでみても、痛みを感じない場合)がない場合は予後はきわめて警戒すべきです。また必ず行うべき検査は、固有知覚検査(Conscious Proprioception)です。 これは肢先(後肢が特に重要です)のみを後ろに曲げてすぐ戻るかの検査です。

深部痛覚検査について ……後ろ足の指を鉗子等で摘んでみると、その肢自体を動物が引っ張るからと言って、痛みを感じると勘違いしてはなりません。これは反射(大脳を経由しない)です。自然に起こります。痛みを感じているかどうかは、動物が反応(大脳を経由する)する必要があります。その反応は、後ろに振り返るとか、嫌がって噛もうとする動作です。

犬の椎間板ヘルニア

↑このページTOPに戻る

質問9.外科手術が絶対的に適応となるのは、どんな場合ですか?
もし深部の痛覚が認められない場合は、予後はきわめて警戒すべき、外科手術が絶対的な適応になります。問題はその時間です。以前は、できれば24時間以内(遅くて48時間以内、最大に遅くても72時間以内)でと言われていました。その理由はその麻痺からの回復率が違ってくるからです。24時間以内に外科手術ができた場合の予後は、30~40%が回復します。48時間以内の場合は、10%の回復率。72時間以内場合は5%の回復率。との報告がありましたが、最近はリハビリティションを組み合わせることによってもっと良い結果が出ています。また最近は以前ほどこの時間の問題は強調されていないようです。でもそれなりに速く行うのに越したことはありません。

犬の椎間板ヘルニア
▲手術前の準備の様子

↑このページTOPに戻る

質問10.この病気はタイプ1型とタイプ2型の2つに分けられると聞きましたが?

タイプ1型とは?……

症状は急性~亜急性、主にはダックスフンド、ビーグル、シーズーらの軟骨異栄養(形成)症の犬が多く、要するに軟骨の変性が特徴で石灰化するタイプである。発症年齢は3~7歳、椎間板の押し出し、逸脱である。
軟骨様化生(Chondroid Metaplasia)(成犬において軟骨に類似する、ものが成熟し、十分に分化したある種の組織が、他の種の分化した組織へと異常に変化すること.化生は異形成とは対照的に後天性である)の特徴を持つ。まれに非軟骨異栄養症の大型犬である、ジャーマン・シェパード、ラブラドール レトリバー、ドーベルマン・ピンシェルやロットワイラーでも起こる(部位はL1-L2が多い)ことがあります。
このタイプのX線検査や脊椎造影検査の所見としては、椎間板の間隔が狭窄またはくさび形、髄核の石灰化、椎間孔の不透明化、脊椎の硬化像等が認められる。

タイプ1型の椎間板の突出

タイプ2型とは?……

症状は緩慢である。すなわち、ゆっくりと進行する後肢の衰弱です。数週間から数ヶ月ときに数年で、非軟骨異栄養症の犬である。線維性化生(Fibroid Metaplasia)の状態で、より易しく言い換えると、タイプ1が、軟骨の変性に対して、タイプ2は線維の変性と言えます。石灰化はない。
発症年齢はタイプ1型より少し高齢が多く5歳以上の6~8歳で、椎間板の突出である。知覚過敏はある場合とない場合があります。このタイプの椎間板ヘルニアは、外科手術は慎重に適応を選びます。数ヶ月におよぶ経過の重症例は、手術をしても改善はむずかしいものです。これは慢性の圧迫の結果、神経単位が修復できなくなっているからです。
このタイプのX線検査や脊椎造影検査の所見としては、椎間板の間隔が狭窄、骨棘の形成がある又はない、終板の硬化像等が認められる。

タイプ2型の椎間板の突出


椎間板の突出、通常、タイプ1型、タイプ2型

↑このページTOPに戻る

質問11.この病気の程度や予後の判定はどのようにしてするのですか?

はい、いろいろなグレード(Grade)分けがありますが、ここでは5段階にて判定します。
問題はクレード5の深部痛覚がない場合です。予後はむずかしく、さらに突然死亡する脊髄軟化症が起こる危険性があります。

グレートⅠ……脊椎部の痛みのみで、神経の検査は正常である

グレートⅡ……歩行は可能であるが、不全麻痺(腰がふらふらする)がある

グレートⅢ……歩行が不可能であり、不全麻痺もある

グレートⅣ……対麻痺 深部痛覚あり

グレートⅤ……対麻痺 深部痛覚なし

※不全麻痺(paresis)(麻痺はあるものの、完全な麻痺ではないという意味)
※対麻痺(paraplegia)(両方の下肢に麻痺が認められる場合)


 【 画像診断 】                 
~ダックスフンド、雄10歳、グレート3の椎間板ヘルニア~


犬の椎間板ヘルニア
▲MRIのT2強調の矢状断面(キャミックに依頼)

犬の椎間板ヘルニア
▲椎間板ヘルニアがあるMRI像T13-L1の頭側像、
造影後のT1強調画像(キャミックに依頼)


犬の椎間板ヘルニア
▲椎間板ヘルニアがあるMRI像、T13-L1の尾側像、
造影後のT1強調画像(キャミックに依頼)


犬の椎間板ヘルニア
▲椎間板ヘルニアがあるMRI像、
T13-L1の造影なしのT2強調画像(キャミックに依頼)



犬の椎間板ヘルニア
 ▲椎間板ヘルニアがあるMRI像、
冠状断像T13-L1 の造影なしのT2強調画像、  
T2強調の矢状断面(キャミックに依頼)


犬の椎間板ヘルニア
▲犬のほぼ正常な椎間板のMRI像(キャミックに依頼)

犬の椎間板ヘルニア
犬の椎間板ヘルニア
▲ダックスフンド、病変部は胸椎T13-腰椎L1の単純X線検査像の側面像

犬の椎間板ヘルニア
▲ダックスフンドのCT像、病変の部位は胸椎T11-12、
白い部分(武蔵野動物CTセンターにて)


犬の椎間板ヘルニア
▲同じく胸椎T11-12、3D画像のCT像、
ワークステーションを用いたCTの仮想内視鏡像


↑このページTOPに戻る

質問12.診断又は手術に際してその方法を決めるのに、CT、MRI等は有効ですか?
はい、たいへん有効です。その椎間板ヘルニアの起こっている部位や、左右どちらに起こっているか、 その他の異常(合併症等)があるかもこの検査で調べます。脊椎の診断はMRI検査が最も理想的な 検査法ですが、撮影時間や費用、設備の有無等に制約があるます。より実用的な検査としてはCTも 良い検査法になりますが約15%でその部位に石灰化が起こってないとわらない場合がありますが、そ んな場合は造影をすれば判定できます。MRIの場合、椎間板の変性はT2強調像、矢状断面像で最 も良く観察、でき脊髄腫瘍、椎体腫瘍等、脊髄髄内の検出にも理想的な検査です。多くの腫瘍はT1 強調像では脊髄と比較すると等信号から低信号に T2強調像では高信号となります。

↑このページTOPに戻る

質問13.診断又は手術に際してその方法を決めるのに、脊椎造影も有効ですか?
はい、有効です。一般的に言うとCTやMRIが利用できない状況においては、この脊椎造影が良い適応となります。特に深部痛覚がない場合は、できれば速く行う必要がありますので、CTやMRIがない設備では、この脊椎造影が通常行われます。椎間板ヘルニアの起こっている部位や左右どちらに起こっているか(斜め像も必要)を調べるために行います。通常の単純X線検査のみでは、その起こっている部位は、約30-70%は推定できますが、左右どちらに起こっているのかの、判定は難しいと言われています。

↑このページTOPに戻る

質問14.犬の椎間板ヘルニアの治療はどのようにするのですか?
内科療法(安静を中心に、抗炎症剤や鎮痛剤、または低出力レーザー、温熱療法とかハリや灸は有効等も治療の有効な手段と思われます)と外科療法があります。外科手術と内科療法どちらが良いのでしょうか?どちらの方法を選ぶかは、その椎間板ヘルニアの状態によります。通常犬がまだ歩ける場合は、内科療法を行いますが、歩けなくなった場合は外科療法の適応となります。しかしすべての開業獣医師が、椎間板ヘルニアの手術をできるわけではありません。

↑このページTOPに戻る

質問15.外科手術と内科療法で治る確率の違いはありますか?
治る確立(もと通りに立って歩けるか?)のみですと、あまり大きな差異はありませんが、文献的には外科手術をした方が、5~10%より多く回復します。外科手術が選ばれる最もの理由は、内科療法は同じ場所に、何度でもまた起る可能性があります。将来を考えると外科療法の方が、予後を考えればより良い選択となるのは明らかです。 外科手術後の再発率は、前後に隣接する椎間板に造窓術をした場合は約5%以下と報告があり、内科療法の再発率は10%前後と考えられています。動物病院にて内科療法のみで、安静にするように言われましたが、後肢の完全麻痺で、外科療法をすることを説明されなかった動物病院は、その外科手術をしたことがないので、説明しなかった可能性があります。外科療法をしても、内科療法は必要で、外科療法+内科療法でより治る可能性が高くなると言うことです。

↑このページTOPに戻る

質問16.どんな外科手術をするのですか?
減圧をするための手術です。主には半側椎弓切除術(Hemilaminectomy)と背側椎弓切除術(Dorsal Laminectomy)がありますが、その変法もいろいろありまが、最も一般的な手術方が、半側椎弓切除術です。手術をするためには、あらかじめその病変の場所と左右どちらに病変があるかを調べる必要があります。

半側椎弓切除術…

脊髄の背側面、側方面、腹側面の露出が可能であるが、反対側の露出はできない

背側椎弓切除術…

脊髄の背側面のみ露出が可能だが、両側性面の背側の露出が可能である。しかし腹側にある病変には困難で、多くの脊椎にはできない。また脊椎の不安定性の問題があり、多くの部位にこの手術は適応できない。

犬の椎間板ヘルニア

↑このページTOPに戻る

質問17.椎間板ヘルニアで急に死亡する、脊髄軟化症とはどんな病気ですか?
椎間板ヘルニアの約3~11%に起こると報告されています。これは上行性に起こる脊髄の軟化症です。椎間板ヘルニアの治療中にだんだんと、呼吸困難となり、なにか溺れていくように、病気はどんどん上行性(頭の方向に)向って進みます。この病気だった場合はほとんどがあっと言うま(数日以内)に死亡すると言う恐ろしい病気ですこの状態になるとどんな治療しても、助けることはできず、たいへん不幸な病気と言えます。但しこの病気が起こるのは、深部痛覚のないグレードⅣの場合のみと言われています。

↑このページTOPに戻る

質問18.治療後どのくらいのたてば歩けるようになりますか?
だいたい2週間以内が目安になります。もし1ヶ月以上であると予後はかなり難しくなります。しっかり長時間のリハビリティションに励み、期待して頑張りましょう。もしどうしても立ってあるけない場 合は犬用の車椅子の使用を考えます。

↑このページTOPに戻る

質問19.手術後のリハビリテーションは有効な手段ですか?

はい、椎間板ヘルニアにはリハビリテーションがとても有効な手段となります。はじめは腰に負担をかけずに、後肢に屈伸運動から始ます。術後24-48時間たっと、痛み止めを行いつつ、麻痺している腰部を吊り布で支持しての歩行訓練を行います。またリハビリティションと併用してレイザー治療や鍼灸等も術後に行うとさらに効果的でしょう。運動機能が良い場合には、胴輪を使用しての歩行が可能となります。リハビリティション中の疼痛管理は重要と思われる。通常は長時間作用する鎮痛剤としてフェンタニルパッチ等が選ばれる。リハビリティションには、丸めた大きなタオルを腹の下において立たせたり、比較的大きなボールを使用して、上半身に乗せたり、しっかり保持しながらボールの上に載せて、脚を使用させたりします。最終的に後肢が使用できない場合は、特殊な用具を用いて車椅子を作成したりします。そんな場合には、その後に時々起こる脊椎歩行に期待するしかありません。

↑このページTOPに戻る

質問20.胸と腰の部分の椎間板ヘルニア(腰麻痺)は、どのくらいの頻度で起こりますか?
全ての椎間板疾患の約85%を占めます。頚部の椎間板ヘルニアは約15%で、腰仙部が約5%です。 しかしながら犬種にいっても違いがあり、ビーグルでは、胸腰部より、頚部の椎間板ヘルニアがより起こりやすいようである。

↑このページTOPに戻る

質問21.椎間板ヘルニアの最も起こりやすい位置はどこですか?
最も多い部位は腰椎のL1-L2椎間腔であるが、胸椎T12ー腰椎L2椎間腔の間で最も起こりやすく、全体の約63-66%を占めます。頸部では頚椎C2-3とC4-5が起こりやすいようです。頚椎C1-2には椎間板がありませんので起こりません。また胸椎T2-3から胸椎T9-10の間は、肋骨頭間靭帯がありますので、あまり起こりません。

犬の椎間板ヘルニア

↑このページTOPに戻る

質問22.犬の椎間板ヘルニアの手術後のレーザー治療は有効な手段ですか?

はい、有効です。レーザー治療については、武蔵野動物レーザー治療センターを御参照ください。ページ内の「椎間板ヘルニア」の項目をご覧ください。以下は抜粋です。

犬の椎間板ヘルニア(IVDD)に対してのレーザー治療のポイント
………経路としては、主に膀胱経路と腎経路を中心に、胆嚢経路と胃経路が関係する。
………経穴としては、
【病変が胸椎10ー腰椎3の場合】
  脾愈(BL-20)、肝愈(BL-18)、腎愈(BL-23)、 膀胱愈(BL-28)、
  委中(BL-40)、足三里(ST-36)、 環跳(GB-30)、足陽関(GB-33)、
  髀関(ST-31)、趾間                 
【病変が腰椎4ー仙椎の場合】
  腰の百会(GV-20)、足三里(ST-36)、環跳(GB-30)、足陽関(GB-33)、
  髀関(ST-31)及び趾間   
【病変が頚部の場合】
  手三里(LI-10)、曲地(LI-11 )、内関(PC-6)、 肘愈(BL-18)

犬の椎間板ヘルニアにおけるグレート毎の治癒成績
グレート分け
レーザー治療の成績

グレートⅠ

脊椎部の痛みのみ
神経の検査は正常

約100%治癒

グレートⅡ

歩行は可能だが不全麻痺
(腰がふらふら)

約99%治癒

グレートⅢ

歩行は不可能であり
不全麻痺

約95%治癒

グレートⅣ

対麻痺  
深部痛覚あり

約80-90%治癒

グレートⅤ

対麻痺 
深部痛覚なし

不明、5%以下?

※不全麻痺(paresis)(麻痺あるが完全な麻痺ではない)
※対麻痺(paraplegia)(完全麻痺、両肢を引きずる)
※レーザー治療の治療成績…内科療法及び理学療法(リハビリティション)を組み合わせた場合にて、発症後1週間以内に治療を始めた場合。
※ 完全麻痺のグレードⅣ、Ⅴに対しては、腎愈(BL-23)と足三里(ST-36)にビタミンB1とB12の混合を注射して、鍼を打ちその部位にレーザー治療を施す。

犬の椎間板ヘルニア
▲椎間板ヘルニアのダックスフンド、膀胱経絡と足三里(ST-36)へのレーザー治療

↑このページTOPに戻る

文責:武蔵野動物・外科センター 菊池里奈 小宮山典寛

 



日本動物病院福祉協会認定 日本ベェツグループ 小宮山典寛 2013.11.13
東京都武蔵野市2-6-4 〒180-0006
Tel: 0422-54-5181(代表) Fax: 0422-54-5537
http://www.pet-hospital.org