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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学

最も実践的な獣医療のために(獣医師向け)

猫の甲状腺機能亢進症の診断と治療法
(2005/3/20 第2回改定)

甲状腺機能亢進症とは?
サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)が過剰に産生されて、濃度が高いレベルで持続するため、いろいろな全身性の病態を示している状態
この状態になる猫は?
 中年から高齢の猫(6-10歳以上) 我が国では多くが10歳以上
 なぜかシャムとヒマヤランは発症が少ない?
臨床症状は?
 1) 食欲亢進(時々低下)
 2) 体重減少
 3) 活動性亢進、落ち着きがない
 4) 下痢と嘔吐
 5) 喘ぎ/呼吸速拍・神経過敏
 6) 多飲多尿・大量の糞便
 7) 呼吸困難、息苦しい
 8) 脱毛・衰弱
 9)ストレス不耐性
他の病気と似ている!
肝疾患に間違いやすい!
腎疾患に間違いやすい!
胃腸系疾患に間違いやすい!
心疾患に間違いやすい!
臨床症状は?

胃腸疾患 1) 食欲亢進 67%
腎疾患 2) 体重減少 98%
胃腸・肝疾患 3) 嘔吐
胃腸・肝疾患 4) 下痢 45%
心疾患 5) 活動性亢進 34%
腎・肝疾患 6) 多飲多尿 45%
心疾患 7) 喘ぎ/呼吸速拍
肝疾患 8) 脱毛 52%

身体検査は?
削痩 97%
甲状腺触知 95%
活動性亢進 81%
頻脈(240) 57%
脱水/悪液質 66%
甲状腺は?
 虫葉型 0.5×2cm
 5%の甲状腺は腫瘍となる
 癌腫は1%である
 5%の甲状腺は異所性である


甲状腺の触知
 喉頭部のすぐ下の気管の両側
 親指と人指し指で上から下へ〜下から上へ
 エンドウ豆からインゲン豆
 大きくなると下へ移動する
 固着は腫瘍(1%)を疑う
正常な猫でも触知できるときがある
甲状腺の大きさと数値には相関関係なし


甲状腺の腫大
 腺腫様の過形成
 2/3が両側性
 1/3が片側性
我が国の場合は甲状腺を触知しにくい?
軽症が多いから?
地域性の問題?
触診のテクニックの問題?
異所性が多い?
血液検査は?
SAP 91%↑
ALT 75%↑
AST 63%↑
BUN 42%↑
PO4 50%↑
合併症は?
 1) 心筋症(甲状腺の中毒による)→超音波検査にて確認
 2) 腎不全→尿検査、血液検査、超音波検査にて確認
 3) 全身性高血圧症(眼の視力は?眼底出血等を眼底鏡にて検査)
→血圧の測定にて確認
 4) 下痢と嘔吐→腹部の触診、超音波検査(リンパ腫に注意)
甲状腺機能亢進症の結果
 エネルギー消費の増加
 カロリー利用能の低下
 酸素消費能の低下
必要な検査は?
 血液検査(血清T4値のみでも91%診断は可能)にて
        他の病気の合併症を調べる
 X線検査(胸水の有無、心臓の大きさ等)
 心電図検査(心拍の亢進、不整脈の判定)
 血圧の測定(甲状腺機能亢進症の80%は高血圧)
 心臓の超音波検査(左心室肥大の程度を中心に検査)
診断法は?
 血清T4値を測定する
 血清遊離T4値を測定する

 血清T4値のみで91%診断できる
 猫甲状腺機能亢進症の91%で高値である
 9%のみでT4が正常である


その理由は?
 T3とT4の値が変動する
 他の病気があるとT4値は低くなる
 正常値の低い猫は高くなってもまだ正常


血清T3値は66.5%が高くなり役立たない
猫の安静時のT4の正常値
正常値 0.5-2.0mg/dl
異常値 5.0mg/dl以上
限界値 2.0-5.0mg/dl

血清遊離T4値を測定する(平衡透析法が信頼できる)
 猫の甲状腺機能亢進症の98.5%で高値である
 1.5%のみで遊離T4が正常である
 特にオカルト甲状腺機能亢進症の場合、
 すなわち安静時のT4の値が2.5-5.0mg/dlの場合、
 血清遊離T4値を測定すると良い
我が国では極めてまれ?
 5〜6年前は国内では数例の発表だが、
 最近ではぞくぞくと?発見されている
 私の病院では、1ヶ月に1例程度が発見される
米国で発見されたのはいつ?
 1981年3月Dr. Peter Theranが第一発見者
 米国での過去の追跡調査では1978年以前はなし
 以前は米国・英国に多く、フランス・ドイツ・東南アジア
に少ないと言われたが、最近は多い?
 ニューヨ−クのAMCでは300頭に1頭の割合
甲状腺機能亢進症の発症の原因は?
Dr. Edward Feldmanの推定は?
Cat Foodが原因説?その根拠は?


何故1980年頃から発症したか?を考える
しかし原因不明の病気は何でも、食事・公害・水が原因
とされる傾向があり、食餌歴を詳しく調べる
米国では1965年頃からCat Foodが普及?
 15-20年後に発症しはじめた傾向あり?

欧州では1977年頃からCat Foodが普及?
 20年後は1997年頃となり最近では以前よりも発見?
 欧州もほとんどなかったが最近増加傾向


日本では1984年頃からCat Foodが普及?
 15年後は1999年、20年後は2004年となる
 さてこれからは?どうなる?
 日本でも増加傾向あり?
 フードはやはりプレミアム・フードが発症が少ない?

治療法
甲状腺機能亢進症の治療
 ■抗甲状腺剤 ■外科手術 ■甲状腺スキャン
抗甲状腺剤による治療の場合
 ・メルカゾール(中外)
 ・チアマゾール(MMI)
 ・チウラジール(田辺)
 ・プロピルチオウラシル(PTU)
 ・プロパジール(中外)

 内科療法の場合の開始薬としてメルカゾール(中外)
 米国ではチアマゾ−ルthiamazole (MMI)
  ※錠: 5mg 注: 10mg 1ml

 ちなみにメルカゾール(中外)と米国のMethimazole
  (Tapazole)は名前は異なるがまったく同じ製剤である
メルカゾール(中外)の使用法
 初回として2.5mg1日2回を2週間
 問題なければ2.5mg1日3回を2週間
 10-15mg/日までが普通
 増加する場合は2週間毎に2.5mg増量
 ANAが出現することあり
副作用(元気消失、嘔吐等)は10%以下で起こる


メルカゾール(中外)のモニター法
 投与して4-5時間後採血
 そのT4の値は?
 始めの3ヶ月は2週間ごとに血液検査(得に腎機能と血小板数)
 その後は3〜6ヶ月毎に検査を繰り返す。
メルカゾールがうまくいかない場合
 ・プロパジール(中外)
 ・チウラジール(田辺)
 ・プロピルチオウラシル(PTU)
  ※錠: 50mgを1日3回

 改善したら50-75mgを1日2回
 食欲不振と嘔吐が主な副作用

Diagnosis & Treatment of hyperthyroidism in the cats.
Feline hyperthyroidism is Mostly advanced age cat disease in Japan.
Feline hyperthyroidism has recently been reported in Japan. It become more common disease, not a rare disease. This disease is a most common endocrine disorder of the cat. The most common clinical signs are weight loss, increased appetite (sometime decreased appetite ), hyperactivity, vomiting, and diarrhea. This disease can cause the development of heart disease. Not only but also they have a heart murmur, difficulty breathing, high heart rate. Examination have to include Blood pressure.