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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学
最も実践的な獣医療のために

猫の喘息の診断と治療
―Diagnosis and Treatment of Feline asthma―



はじめに
猫の喘息のその症状とは何か?
この病気は猫の喘息以外の呼び名はありますか?他に何と呼ばれていますか?
なぜ持続的な咳が出るのですか? この病気の成り立ちは?
猫の喘息(アレルギーの素因を持つ猫)に対する飼い主に指導する環境対策について
この病気の予後はどうですか?
その診断法は?どうおこなうか?正確な予後の判定のためには何の検査が必要か?
実際の治療法は?
特に緊急時に飼い主ができる治療法について
猫の喘息の実際の映像
最近注目されている、飼い主ができる猫のエアゾール療法について
■はじめに
猫は犬と違い本来「咳」をすることは少ないといわれていますが、この病気は例外です。
ゆえに猫が咳をする場合は喘息を疑います。猫が咳をしたらこの喘息と猫の心臓糸状虫症(フィラリア症)を疑います。(そのためにオカルト・フィラリアのテストも通常行います)
なぜかこの心臓糸状虫症は約30%の猫は嘔吐もします。心臓の病気なのに嘔吐するのは不思議ですが、猫独自の自律神経の働きのせいかもしれません。

■猫の喘息のその症状とは何か?
突然何の前触れもなく、急に立ち止まって、頭を下にむけてうずくまる姿勢でゲー、ゲーします。何か吐く、嘔吐でもするかのようですが、通常は何も出ません。ゲーゲーとすごい音を立てるので、多くの飼い主は、何が起こったのか戸惑うことでしょう。急に猫が吐き気をもよおしたと訴える飼い主もいます。数回かすると、ケロとして、又もとの普通の猫に戻ります。これが猫の喘息の特徴です。一言で言うと、「続けて吐くような咳」と言えます。シャム猫には素因があるようですが、比較的若い成猫に多いのですが、いろいろな猫に起こりますが、日本猫も多いように感じます。
■この病気は猫の喘息以外の呼び名はありますか?他に何と呼ばれていますか?

Figure 1  3歳半のアメリカンショートヘアー

この病気は猫のアレルギー性の病気です。一般的には猫の喘息とか呼ばれることが多いのですが、いろいろな病名で呼ばれているのも特徴ですが、このことは、それだけ病気が今だ、判っていないと言うことでしょうか?
少し調べてみると、10通りの病名がありました。猫の病名で最も多い病気と思われます。
猫のアレルギー性気管支炎
猫の好酸球性気管支炎
猫の気管支肺疾患
猫の慢性気管支炎
猫の気管支疾患
猫の気管支喘息
猫の慢性閉塞性肺疾患
猫の細気管支炎
猫の小気道疾患
とかのいろいろな病名で呼ばれています、この病気は猫に起こる特異的な病気です。この病気は診断を疑うのは比較的簡単ですが、治療はその程度にもよりますが、なかなかむずかしいものです。確定診断と持続的な治療が最も重要となります。

■なぜ持続的な咳が出るのですか? この病気の成り立ちは?
気道内に吸い込まれた抗原(誘導物質、刺激物)がセロトニンを放出(肥満細胞が脱顆粒する)して、気道の平滑筋を収縮させます。

気管や気管支への長期間(2ヶ月以上)の持続的刺激(炎症)によって発咳は起こります。気道の粘膜に浮腫を起こし肥厚して、粘液の生産が活発となり細胞浸潤が起こってきます。これらの粘液が刺激となり咳が起こります。これらの粘液が比較的細い気道に溜まると、咳と言うより、息を吐くときに問題が起こり(喘鳴と言い細かい気道の炎症の結果)ます。

最終的に気道が閉塞すると、空気が肺胞(肺の中)に閉じ込められて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と成ります。これはいつも胸の中に空気が閉じ込められて、空気が外に出られない状態となるので、動くと息は苦しくなります。肺気腫の状態となります。この状態が続くと、最後は安静にしても苦しくなります。そんな場合は最低限苦しまないよう、痛みを感じさせないように飼い主と治療する獣医師が協力して対処すべきです。

飼い主には環境の改善に心がけてもらいます。いわゆる環境対策をしてもらうわけです。考えられる基礎的な原因をできるだけ除いてもらいます。飼い主に指導すべきことには、以下の事柄がある。以下の要因が複雑に絡み合い各々がそのアレルギーに引き金になる可能性がある。


■猫の喘息(アレルギーの素因を持つ猫)に対する飼い主に指導する環境対策について
以下が疑われている刺激物(誘引物質)です。これらをできるだけ取り除きましょう。

1) 掃除や洗濯を良くして、少しでも塵埃やダニの発生を抑える。
2) 塵埃や花粉対策用の空気清浄機を使用する。
3) 家にあるエアーフィルターをこまめに交換してもらう。
4) カビを防ぐため除湿機を使用したり、また植木鉢には活性炭を敷く。
5) ノミの予防を徹底して行うが、粉のタイプは使用しない。
6) ゴキブリ用の家庭用の噴射式の薬剤を環境のノミ駆除として利用できます。注意して使用。
7) 換気を出来るだけ良くして、空気の清浄化する。
8) じゅうたんや布団等はできるだけ清潔にし、猫のいない時に掃除する。
9) 猫のいる場所ではタバコを吸わないよう(受動喫煙となる)心がける。
10) 例えば各種の殺虫剤等のスプレー等の刺激物はできるだけ猫のいない時に行う。
11 ) 気温の急激な変化や暖炉を開放にしておくことをできるだけ避ける。
12) 猫砂は粉が舞い散らないタイプのものを使用する方が無難である。
13) 定期的に猫にシャンプーやブラッシングを行い皮膚の清浄化を保つ。
14) 芳香剤や消臭剤、お香、香水等も刺激物になりうるので注意する。
15) ウィルス性の上部気道感染も誘導物質なので予防接種を行うこと。
16) 定期的な健康診断(糞便検査を含む)を行い少しでも体力の低下を防ぐこと。
■この病気の予後はどうですか?
短期的には良いのですが、長期的に考えると、その程度にもよりますが、予後は警戒すべきと思われます。より症状が酷くなった場合は、開口呼吸をしてチアノーゼとなります。そんな場合は緊急に治療が必要となります。この猫の喘息は、夜間の緊急例の代表的な病気です。
そのためにも、最近では欧米では、飼い主ができるエアゾール療法が普及しつつあります。
この方法については後ほど説明いたします。この病気は飼い主にいろいろな情報を与えインフォームドコンセントを十分にする必要があると思われます。


■その診断法は?どうおこなうか?正確な予後の判定のためには何の検査が必要か?
臨床症状によって疑うことができますが、身体検査、X線検査、血液検査、気管洗浄等によって診断します。以下はその各々の概略を示したものです。

身体検査
吸気音は正常だが呼吸において喘鳴が聞こえます。

X線検査
気管支パターンが認められます。また横隔膜が斜めになり、暗い肺野の部分が多くなります。時に右の中葉や左の後葉に硬化像が認められます。


Figure 2. 治療前のX線写真、肺のX線の透過性の亢進と気管支の肥厚を認める

Figure 3. 治療3日後のX線写真、肺の透過性が低下(改善している)している。

血液検査
約30〜50%で好酸球の増加が認められます。しかし外部や内部の寄生虫でも増加します。ストレスパターンが認められる場合もあります。可能性は少ないのですが、心臓糸状虫(フィラリア)を除外するために、この検査もできるだけ行うと良いでいしょう。

気管洗浄
喘息の原因はいろいろですが、その鑑別には気管洗浄を行うことができます。気管支を洗浄して何があるかを調べる。通常はその細胞は好中球、好酸球、マクロファージ等が一定の割合で存在している。またグラム染色をしたりもします。細菌(培養する)、アレルギー(好酸球が多い)、ガビ(酵母菌)、腫瘍(腫瘍細胞)となにが見えるかによって診断し治療に役立てます。このような手順で診断しても、一部の咳はなかなか止まらない難治性の場合もあります。


■実際の治療法は?
獣医師はまずは猫を安定化することから始めますが、それにはステロイド剤や、気管支拡張剤を使用します。またエピネフリンを使用する場合もあります。より重症な場合は、酸素吸入(ケージや経鼻やエリザベス・カラーを使用する)、エアゾール療法、麻薬系や非麻薬系の鎮痛剤等の使用も始めます。より良い治療の反応を調べるには血液ガスが有効な手段となります。

飼い主には環境の改善に心がけるべきです。このことはもし飼い主が、アレルギーの体質を持つ場合には、より重要となるでしょう。いわゆる環境対策をするわけです。それがひいては、動物にも良いと言うわけです。それにはまずは、考えられる基礎的な原因をできるだけ除いてもらいます。前記した、"猫の喘息(アレルギーの素因を持つ猫)に対する飼い主ができる環境対策について"を御参照ください。

治療して良くなっても安心できません。続けて治療しないと再発します。治療はなかなかやめることはできません。多くは生涯治療が必要と飼い主に説明します。これを良く理解してください。

治療の方法は飼い主ができる、方法について話し合うことが大切です。この病気は1回治療して治ることはまず無理と思われます。始め治療して良い結果となるでしょうが、それはその時だけで、続けて治療することが重要です。いつまで治療が必要かは、各々の症例によって違ってきます。これは人間の喘息の治療とおなじです。続けて治療する必要があることを飼い主は理解いたしましょう。少なくても治療のはじめは1〜3ヶ月は薬を調節しながら(最小限の薬剤を使用しながら)使用します。調子が良いからと言って、途中で止めるとその後、1〜4週間後にまた症状が出てくることが殆どです。喘息と言うのは、調子の良い時と、喘息の発作が出たときの差がとても激しいのです。ですから普段いくら元気であっても、もう喘息は出ないとは限らないのです。これは体質からくるもでなかなかすぐには体質が改善しないからです。そのためにはあなたの猫を良く観察することです。特に喘息の起る前の状況を良く覚えておくと良いでしょう。その状況になれば、危険なサインと言うことです。最終的には、いつも正常に近い呼吸を維持させることです。

最後は肺気腫の状態となることが予想されます。近年では不可逆性の肺の繊維性変化を防ぐため、すなわち、猫の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を防ぐことです。


■特に緊急時に飼い主ができる治療法について
前記した環境対策以外には、診断した獣医師から処方された薬剤を飲ませることや、外出させないことや、状態によって安静を保つことでが、最近ではこれらにエアゾール療法を組み入れたりする場合があります。
この方法は2つあって、従来から行われている、噴霧療法(ネブライザー療法)と飼い主が行う吸引療法です。

噴霧療法(ネブライザー療法)は通常は動物病院で行うものですが、状況によっては、飼い主自身がその機械を購入したり、動物病院からレンタルしたりの方法もあるかもしれません。飼い主が行う吸引療法は以下に述べます。


■猫の喘息の実際の映像


(映像が見られない方は、こちらからファイルをダウンロードしてご覧下さい。
映像プレーヤーとしてWindowsMediaPlayerが必要です。)

典型例としては、突然、急に下を向きながら、続けて、吐くような(実際には吐きません)動作で、咳(から咳ー乾性の咳)をします。通常は4−6回続くようです。その後はまったく、苦しそうでなく、まったく普通の猫になります。

■最近注目されている、飼い主ができる猫のエアゾール療法について
最近米国では飼い主が参加できる猫の喘息の治療法としてエアゾール療法が注目されています。かなり期待の持てる治療法と考えられていますが、しかしながら、その効果やその安全性はまだ確立されていません。しかし現在では多くの専門医の獣医師を始め多くの獣医大学がこの方法を取り入れて治療しており、その効果や安全性が認められつつあります。しかし、使用の際には過剰投与を避けるようにする注意が必要です。これは人間の医学の応用から由来したもので、理論的にはすぐれた療法であるのですが、問題はその実施にあたって猫の気道に効果的な薬物濃度が行きわたるか、どうかと言うことです。そのためには猫の保定の方法や猫がどれほど嫌がるかにも、この方法がうまく行くか左右されます。

この方法の私のお勧めは、通常の治療で副作用がより強くでてしまう、または、副作用が発現しない程度の薬剤を使用すると、その効果があまり有効でない(発作があまり抑えられない)と確認された場合です。そんな場合にこの療法に切り替えて効果が確認されれば(発作がかなり抑えられる)この療法を続けます。もし効果がない場合、や副作用が認められた場合は、他の方法に変更します。




米国でこのエアゾール療法を熱心に勧めているのが、Dr, Philip Padrid と言う獣医師です。AeroKat
TM (エアロキャット)と言う名前で、その使用するスペーサーを猫用に作り、その用具を販売しています。以下にその解説のホームページがあり、英語ですがその方法が動画で見ることができます。

Administering Inhaled Medications:(実際の方法の解説・動画の説明、ただし英語です)
と、
Towel Treatment(猫をタオルで保定する方法の解説・動画の説明、ただし英語です)
を参照にしてください。


Dr, Philip Padridの解説のホームページの写真より(http://www.aerokat.com/)

猫のエアゾール療法の方法の手順を写真にて説明しています。

その方法は定量噴霧式吸入器(MDI)を1回押して(噴射)10秒間そのまま保つと言う方法を2回くり返すか、または、5秒ごとに1回押して、10秒間そのまま保つと言う方法だが、最近では3回押して10秒間そのままにすることを推奨している専門医もいる。また予めスペーサーに1回噴射しておくとスペーサーを猫に当てたときに嫌がらないと報告する獣医師もいる。あらかじめ嫌がりそうな猫は、安全のためタオルで猫を包んで保定する。また定量噴霧式吸入器(MDI)を使用する際は、15秒間あらかじめ良く振ることが必要である。

エアゾール(吸引)療法で使用される薬剤(定量噴霧式吸入器―MDI―)は2つあります。1つはストロイド剤である、フルタイド(プロピオン酸フルチカゾン)ともう一つは、気管支拡張剤である、ベネトリン(硫酸サルブタモール)であります。これらは、定量噴霧式吸入器(MDI)と呼ばれています。動物におけるエアゾール療法では、猫の口と定量噴霧式吸入器(MDI)の間に、スペーサー(西藤子供クリニックの解説を紹介します。スペーサー一覧)と呼ばれる用具を使用しますが、どうしても入手できなければ、トイレットペーパーのロール芯を、代用品として利用することも可能と思われます(中は見えませんが)。スペーサーを用いる理由は幼児と同じく、猫自身で薬を噴射した際に、息を吸ってくれない(薬剤を吸引しない)からです。

日本で入手できるスペーサー「ボルマチック」です。折りたたむことができます。
サブタモールと同じ会社で、同時に入手できます。


日本で入手できる「エアロチャンバー」のスペーサーです。

定量噴霧式吸入器(MDI)であるベネトリン(硫酸
サルブタモール)は発作時に使用します。
定量噴霧式吸入器(MDI)であるフルタイド
これはステロイド剤で予防に使用します。

通常の方法は、予防にはステロイド剤である、フルタイドを使用し、発作時の治療には、気管支拡張剤である、ベネトリンを使用しますが、状態によって両方を使用する場合もあります。

■猫の喘息の治療法は?多くの方法からいかに選ぶかが問題です。

胸部打撃法
(クーパージ)
・・・・・・・・・ これは咳をしやすくするための方法です。胸を軽く叩く方法です。
ステロイド療法 ・・・・・・・・・ 通常はステロイド療法からはじめます。症状によって、0.25〜1.0mgを1日2回から始め、この量で症状が改善したら、3〜4週間かけて暫時減量し、最終的には約半量にする。その後は状態によって隔日投与にできることもある。
気管支拡張剤 ・・・・・・・・・ テオフィリンや塩酸テルブタリン(ブリカニール)が使用できますが、特に塩酸テルブタリン(0.01mg/kg)は緊急時に飼い主が注射することも可能な場合があります。
抗生物質療法 ・・・・・・・・・ 細菌の感染が疑われる場合には使用されます。
ネブライザー療法 ・・・・・・・・・ これが本来のエアゾール療法である。
抗セロトニン療法 ・・・・・・・・・ これは気道内に吸い込まれた抗原(誘導物質、刺激物)がセロトニンを放出(肥満細胞が脱顆粒する)して、気道の平滑筋を収縮させます。ゆえにこのメカニズムを止めようとするために投与します。シプロヘプタジン(ペリアクチン1〜2mg/頭、1日2回)
シクロスポリン療法 ・・・・・・・・・ これは免疫療法の一環として行われる。Tリンパ球の活性を阻害する働きがある。
安静療法 ・・・・・・・・・ 発作の刺激とならぬように、安静を保つ。
シャンプー療法 ・・・・・・・・・ 全身に付着したアレルゲンを除去するために、抗アレルギー性のシャンプーで薬浴する。
エピネフィリン療法 ・・・・・・・・・ 真に緊急の時、すなわち重度の発作時には使用を考慮する。1000倍のエピネフィリンを皮下に0.1ml投与する。
酸素療法 ・・・・・・・・・ 重度の発作時に使用する。


治療で重要なことを再度説明しますが、良くなったからと言って、飼い主の判断で、治療を止めると、多くがまた症状がでることを理解してもらいます。


Feline asthma
Feline asthma has been many names, for example, allergic bronchitis, chronic bronchitis, eosinophilic bronchial and bronchitis asthma. Usually we don't known cause, depend on in individual cats, but most common cause is grass and tree pollens, smoke, different kinds of sprays such as hair, flea, deodorants. Inhaled allergens cause by sudden contraction of the smooth muscles around the airways. Typical clinical symptoms is the continuous cough and wheeze, increased respiratory rate.A diagnosis of Feline asthma is chest x-rays, complete blood count and feline heartworm test. Confirm diagnosis is to take sample cells from the lower airways (transtracheal and bronchial wash), Chest x-rays may be sometime normal with asthma, But others signs will be seen such as collapse of the right middle lung lobe, and over inflation of the lungs. Feline asthma is a chronic progressive disease. Treatment include antibiotics, bronchodilators, or corticosteroids.But medications can reduce the symptoms. Especially recent years, many veterinarians to use inhalers such as human asthmatics use.