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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

猫の膵炎

どのような病気ですか?
急性膵炎
慢性膵炎
診断
原因
治療

■どのような病気ですか?
膵臓の病気は、膵臓の内分泌の病気と外分泌の病気に分れます。前者で代表的なのは、有名な糖尿病です。そして後者は、これから解説す膵炎などの病気があてはまります。

猫の膵炎は、一般的に犬ほど診断されませんが、散発的に発生が見られるものです。これらの発症率が低いのは、実際の発症率と言うよりも、むしろ診断の難しさに関連していると思われています。事実、急性膵炎と診断された大部分は、試験的開腹術によってあるいは剖険によって診断されています。しかしながら最近では超音波検査が広く利用され、それらの病気の診断率も徐々にではありますが、改善されつつあります。

急性膵炎と慢性膵炎とに分かれます。またそれらの中間型のようなものもあるようです。急性膵炎とは突然に発症する膵臓の炎症です。慢性膵炎は持続的に起こる炎症性の疾患で、永久的にその機能が障害される可能性があります。急性膵炎は慢性膵炎よりも多く診断される傾向にあります。
■急性膵炎
まず急性膵炎から説明を始めましょう。年齢、性別、品種による好発傾向はあまり認められていませんが、わずかにシャム猫系に多いようです。臨床症状としてはあまり、特異的なものはなく、これがこの病気の診断をさらに難しくしているようです。

多くの猫は嗜眠傾向があり部分的あるいは完全な食欲不振があるということです。しかしこれらは猫の病気の最初の症状としての状態で、多くの病気は、この2つの症状が出ますので、何も診断上の手掛かりになるものではありません。

本来膵炎は消化器系の病気ですから消化器の病気の本来の特徴である嘔吐、下痢、腹痛等は20〜30%ぐらいしかでないようです。その他の所見としては、脱水、黄疸、呼吸速拍、頻脈、低体温、等が認められます。
■慢性膵炎
慢性の膵炎は、より臨床症状がわかりにくいものです。そして慢性膵炎は、急性膵炎ほど起こりません。その診断もよりむずかしくなります。
■診断
この病気の診断は、小動物臨床の獣医学領域でも最も困難な病気のひとつといわれています。診断をしすぎることもあり、またほとんどは診断がされていないということです。診断は病歴の聴取、身体検査、血液検査、エックス線検査、そして最も有効と思われているのが、腹部の超音波検査です。超音波検査の所見で、すい臓の低エコー性の陰影と腹膜からの滲出液様の所見があれば、診断を疑うことができます。
■原因
猫の急性膵炎の原因としては、胆管系の疾患及び中毒(特に有機リン化合物)、虚血性、外傷、特異体質による薬物の反応、感染症、脂肪の異化作用等が示唆されています。猫の原因としては、膵臓の血流あるいは微小血管の透過性の変化が最も疑われています。
■治療
治療としては、初めは絶食して、膵臓を生理学的に休ませます。輸液をして血液量を維持し、身体の成分(酸塩基平衡、電解質)を補正して、あらゆる合併症を治療し予防します。そして1〜2日間まったく嘔吐がなければ、少しずつ水分を与えます。そして異常な臨床症状が認められなくなったら、消化の良い食事を少しずつ与えます。

なによりも水分と身体の成分(酸塩基平衡、電解質)を調節しながら、食餌療法を行うことが重要です。猫が発熱や、血液を調べて中毒性の変化があれば、抗生物質の治療も行います。腹痛が認められる場合は、鎮痛剤を投与します。そして十分に休息を与え、休んでいる時間を多く取らせ、必要以上に猫にかまわず、落ち着いた環境を作り出すことが必要です。