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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

チンチラの飼い方と病気
(Chinchillas)

性質について
食餌について
住まいについて
予防的看護
早見表
繁殖について
雌雄の判別表
一般的な臨床的疾患状態
人獣共通伝染病の可能性

『エキゾチックペット獣医学ハンドブック』
(日本ベェツ・グループ発行)
チンチラの項目より一部を転載
■性質について
チンチラの行動は、元来夜行性であるが、昼間の間も活動できる。チンチラは敏捷で機敏であり、おどけたしぐさで自分たちの一家を楽しませるようなユーモアのセンスを持っているように見える。

チンチラは、自分たちの囲いの中あるいはトイレで排尿する傾向があるが、彼らの小さくて硬くて乾燥した糞に関しては、トイレのしつけは難しい。遊んだ後には電気掃除機あるいはほうきが必要となる。

行動には、水平や垂直両方向に登ったり、素早く動いたりする事が含まれる。チンチラはめったに咬まない。ほとんどのチンチラが、抱かれたり連れて歩かれることを好む。
■食餌について
食餌については、チンチラはアンデス山脈の寒くて乾燥した地域が出生地なので、貧弱な餌によく適応させられる。いくつかの製品のごちそうと一緒に、乾草の食餌やペレット食をよく食べる。

市販のチンチラ用の食餌(例:PMIあるいはMazuriR)を好きなだけ食べさせる。あるいは、時々以下のものを含める:18〜20%の粗蛋白、2.3〜3%の粗脂肪、15〜18%の粗繊維、9〜10%の灰分に約20%のミネラルを加える。ほとんどの成獣のチンチラは1日におよそ21.2〜28.3gのペレットを食べる。

繁殖や妊娠時に1日にビタミンEが30〜60mg入った補助食を与える。また、自由採食としてチモシーの乾草や少量のアルファルファ(ばらで、あるいは角状の)あるいはクローバーの乾草(1日の摂取量が25%以上にならない)を与える。

乾草には、カビ、昆虫、その他の動物の糞便の混入や殺虫剤が入っていてはいけない。
ごちそうの食べ物は、控えめに与える(それぞれ1品目を少量:1日当たりのごちそうである補助食の総量が、1頭の成獣チンチラにつきティースプーン1杯を越えない):ドライフルーツ、ナッツ、ヒマワリの種、様々な緑色野菜、新鮮なニンジン。

1日当たり成獣チンチラ1頭に対するおよその食餌の消費量:ペレット28.3g、乾草1/2-1カップ、野菜ティースプーン1杯。乾草は絶えず利用できる。

チンチラは簡単に不調になる、比較的繊細な消化管を持つ。薄い壁で渦巻き状に巻いている大きな盲腸を持ち、反芻動物の第1胃と同じ様な働きをしている。水は食器で与える(チンチラは食器をひっくり返すのが大好きである)あるいは、水飲みボトルをケージの横から吊しておく。
■住まいについて
チンチラは、大変活動的で曲芸的な動物なので、大きなウサギ用のサイズ(少なくとも1.2m×1.2m×91cm)の囲いで飼うべきである。できるだけ外へ出したり、周りを走らせたりする機会をあげると、とても喜ぶ。

固い床の付いた、あるいは付いていない溶接されたワイヤーメッシュがよい。囲いの中に砂箱(金属薄板:15cm×15cm×23cm)のための空間を用意する。砂浴びは毎日10〜15分あるいは少なくとも1週間に4〜5回させる。砂は5〜10cmの深さにすべきである。市販ブランドのチンチラ用の砂が入手できる。木製の巣箱を眠るために準備することができる。

最適の温度は10℃〜15.5℃(26.6℃よりも高いと致命的となりうる)。湿度は40%あるいはそれ以下である。
■予防的看護
・幼齢の健康診断、糞便の寄生虫検査と毎年の定期検診。
・良質の栄養素と良い衛生状態を維持する。
・損傷から守ること。そして、毛皮の真菌の徴候を観察する(チンチラは丈夫で、ほとんど病気にはならない)。
■早見表
生理学
寿命 9〜17年
成獣の雌の体重 450〜800g(雌の方が雄よりも大きい)
成獣の雄の体重 400〜500g
体温 38〜39℃
直腸温 38.9〜39.4℃
呼吸数 45〜80回/分
心拍数 200〜350回/分
糞便 直径2〜3mmで長さ5〜12mmの
細長く茶色の糞粒
歯列弓/萌出時間 1/1切歯、0/0犬歯、1/1小臼歯、3/3
大臼歯全ての歯はオープンルートで、生涯伸び続ける。
切歯は黄色で、一年に5.5cm〜6.5cm(2.5〜3インチ)伸びる。

生殖学
性成熟 7〜10ヶ月
性周期 30〜50日 多発情性
分娩後発情は生殖能力ある
妊娠期間 105〜115日
出産 4時間以上
出生時の体重 30〜60g
胎児数 平均2頭(5頭まで)
新生児 早熟で、全身柔らかい毛で覆われている
離乳年齢 3〜6週

■繁殖について
繁殖と子育てについては、チンチラは多産系ではない。繁殖させることは簡単ではなく予測できない。その他の齧歯類のペットと比べたときの胎児数は少ないので、値段が高くなる。

コロニー内で雌雄一緒に同居できるが、また一夫多妻(5〜10頭の雌に対して1頭の雄)として同居できる。多発情性周期/季節で、季節性繁殖(北半球で11月〜5月)。雄は普通、分娩するすぐ前か、分娩時に雌から離される。しかし、もしつがいで飼育しているなら、雄を取り除く必要はないかもしれない。もし雌が、雄の存在をずっと受け入れ続けるなら、雄はめったに子どもを困らせることはない。

新生児は完全に生えそろった歯を持っており、全身柔らかい毛で覆われている。1日以内に目が開く。新生児は、特に2頭以上いるなら、お互いに攻撃的であるかもしれない。もし室内がかなり寒い状態が続くなら、数日間子どものケージの下に小さな保温マットを敷いておくとよい。

もし母親のミルクが不足しているなら、子どもを里子に出すことができる。あるいは、50:50で無糖練乳(濃縮乳)と沸騰させた水を混ぜたものを暖めて作った手作りミルクで育てることができる。25%溶液になるようにデキストロースを加える。

点眼瓶で世話をする:最初の週は2〜3時間毎に数滴、それから離乳まで1日に3回、子どもが欲しがるだけ与える。2週目の初めに、調合乳にビタミンを滴下し、ベビー用の穀類(シリアル)を加えるとよい。人工哺乳においては2〜3週間で離乳できる。
ほとんどの雌は、人工哺乳をしている数分間の間は、ベビーが触られていることを嫌がらない。
■雌雄の判別表
膣は普通は発情期の間(3〜5日間)と分娩の間を除いて、膜によって固く閉じられている。肛門は、泌尿生殖器の開口部のすぐ尾側にある。円錐形をした泌尿生殖器の乳頭状突起が膣の腹側にある。雌はそれぞれの鼠蹊部に1つずつ、およびそれぞれの外側肋骨部に1つずつ乳頭状突起を持つ。
ペニスはかなりの距離で肛門から離れている(肛門生殖器間距離は雌の2倍)。雄は陰嚢を持っていない。精巣は鼠蹊管あるいは皮下にある。

■一般的な臨床的疾患状態
・不正咬合、食欲不振
・皮毛や皮膚の異常 ・熱ストレス
・腸炎、下痢
・直腸脱
・呼吸困難/肺炎
・眼の刺激(過敏症)
・寄生虫症
・熱ストレス
・外傷
・発作/痙攣/斜頚
■人獣共通伝染病の可能性
・Trichophyton mentagrophytes毛瘡(白癬菌)
・Baylisascaris procyonis
・Microsporum canis イヌ小胞子菌
・ノミ
・M. gypseum 石膏状小胞子菌
・リステリア
・リンパ球性脈絡髄膜炎
・モノサイトゲネス
・咬傷あるいは引っかき傷による細菌