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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

神経疾患の診断
異常の前に正常を知ること

神経病の診断と治療
 まずは本当に神経病が存在するのか?を考えることから始める
 例えば跛行で整形外科との鑑別
病歴の聴取
 診察室内を自由に歩きまわれるようにする
 環境(外部の刺激)にどう変化するか?

まず異常を知る前に正常を知ること
神経学的疾患のアプローチ
 1)特徴(種類・性別・年齢)
 2)主訴
 3)病歴の聴取(急性・進行性)
 4)身体検査(全身性疾患は?)
 5)問題点リスト
 6)神経学的検査
 7)原因の可能性リスト
 8)診断プラン(MDB)
 9)診断プラン(補助検査)
 10)飼い主教育
STEP1:何処に病変があるか?
脳神経 斜頚
脊髄神経 後躯麻痺
末梢神経 跛行

病変部はどこか? 部分病変
多数病変
全身性病変

横断性vs全身性
 単一性(巣状性)
 多発性(散在性)
 全身性(広汎性)

脳神経
 脳病変が疑われた場合に行う
 脳神経検査

小脳テントより上
 視覚の異常
 見当識障害
 円運動
小脳テントより下

軸索内
軸索外

脳神経
 大脳皮質
 小脳
 脳幹
 前庭
 視覚
 脳幹神経節(基底核)

大脳症状群
 痙攣発作
 精神状態の変化
 行動の変化
 姿勢と運動の異常
 うろつき
 頭部の押し付け
 円周運動
※円運動(サークリング)とは?
  脳幹後部→小さい円運動
  前庭系→円運動+斜頚
  斜頚のみ→耳の病気?


脊髄神経
 頚部
 頚膨大部
 胸腰部
 腰膨大部
C1-C5
C6-T2
T3-L3
L4-Cd3

末梢神経
 背根 神経筋接合部
 腹根 末梢神経固有部
STEP2:どんなタイプの病変か?
炎症性?
外傷性?
変性性?
先天性?
腫瘍性?
STEP3:病変の原因は?(後肢麻痺の例)
 急性→出血 外傷 椎間板の問題
 慢性→腫瘍 変性性 ミエリンの脱損

 痛みあり→椎間板ヘルニア
 痛みなし→梗塞

 6ヶ月の小型犬→歯突起
 9歳のシェパード→腫瘍
 6歳の♂のダックスフンド→椎間板ヘルニア
神経学的検査は身体検査の延長
感覚機能と運動機能
いつも同じ様に!

運動の異常と姿勢の異常
最も認められる症状

神経学的検査は病変はどこかのみ判定できる
その原因は判定できない!
神経学的検査
一般的原則
記録用紙に記入すること
落ち着いた環境で実施する
いつも同じ方式で行うこと

6ステップルール
1)全身状態の観察
2)触診
3)姿勢反応
4)脊髄反射
5)脳神経
6)知覚
1)まず精神の状態を判定をする
 活発(正常)
 沈鬱状態
 昏迷状態
 昏睡状態

歩行の状態
 滑らない床面で!
   固有感覚
   不全麻痺
   回旋運動
   運動失調
   測定障害

姿勢の状態
 頭部と体躯と四肢の関係
   正常な姿勢が保てるか?
2)筋骨格系と皮膚の触診
 触診
   筋萎縮は?
   左右対称性か?
   痛みは?
   爪の状態は?

 筋萎縮→末梢神経疾患
 筋緊張亢進→脳脊髄神経疾患
まず反応vs反射の違いを理解する
反射→大脳まで行かないで反応する
反応→大脳まで行って反応する
欠如(0) 減少(1+) 正常(2+) 亢進(3+) 過剰亢進(4+)
3)姿勢反応
 正常な立位を維持するための複雑な反応
 神経のすべてにおいて関係するため病変部の位置は不明
   固有知覚反応
   手押し車反応
   片足跳び(ホッピング)
   姿勢性伸筋突伸反応
   踏み直り反応
   片肢歩行反応

意識的固有知覚(固有知覚反応又は固有位置感覚)
 プロプリオセプション:代表的な姿勢反応検査
 運動機能障害(随意運動)が発症する前に発症する
 脊髄の圧迫障害の最初の徴候
 病変部の位置ぎめは出来ない
脊髄反射
膝蓋反射
屈曲反射
上腕二頭筋反射
上腕三頭筋反射
肛門反射
交差伸展反射
4-1)脊髄反射・膝蓋腱反射(大腿四頭筋反射)
    伸展筋反射の評価に最も確実
    末梢神経は大腿神経で犬ではL4からL6の脊髄分節
4-2)伸展筋反射の亢進
    L4の脊髄分節より前方の(脳及び脊髄)下向経路(上位運動ニューロン)の機能欠如

伸展筋反射の減少や欠如
    反射弓における知覚系と運動系(下位運動ニューロン)の病変を示す
      片側のみの欠如→大腿神経の神経根の病変
      両側の欠如→L4からL6の病変
4-3)引っ込み(屈筋)反射:Withdrawal (flexor) reflex
    前肢の屈曲反射は、
    腋窩・皮筋・正中・橈骨・尺骨神経の分枝(上腕神経叢)に支配され
    C6からT1の脊髄分節に支配される
      反射の欠如→上記部位の病変
      反射の亢進→C6より頭側の病変

    後肢の屈曲反射は、脊髄分節のL6・L7・S1+坐骨神経
      反射の欠如→上記部位の病変
      反射の亢進→L6より頭側の病変
4-4)会陰(肛門)反射
    肛門括約筋の収縮反応
    仙椎の脊髄分節と仙椎神経根の機能評価となる
    特に膀胱機能障害では重要
脊髄神経の区分
 これらの領域は脊椎ではなく脊髄分節らかなり
 脊髄分節が同一番号の脊椎と必ずしも一致しない
頚部
C1-C5
・四肢の運動失調と不全麻痺
・まれに重度な四肢麻痺(呼吸麻痺も同時に発症)
・頭部病変が存在するとホーナー症状群
 (眼瞼下垂・眼球陥没・縮瞳)
胸腰部
T3-L3
・脊髄疾患の大部分がこの領域
・通常は前肢は正常で後肢は
 不全麻痺か麻痺か運動失調
・慢性疾患では後肢の廃用性萎縮
頚膨大部
C6-T2
・四肢の運動失調と不全麻痺
・まれに前肢の不全麻痺と後肢の麻痺
・脊髄反射・筋緊張は前肢で正常か低下
・後肢では正常か亢進
腰膨大部
L4-Cd5
・通常は前肢は正常で後肢は
 不全麻痺か麻痺か運動失調
・膀胱の機能不全と肛門括約筋と
 尾の不全麻痺か麻痺
・後肢の反射と筋緊張は低下か消失
反射評価には3種類ある
 反射に対する反応として知覚系や運動系のどちらかの機能が、
   欠損または低下→機能が完全か部分的に障害
   正常→無傷
   亢進→反射を抑制的に支配している脳からの経路の異常
5)痙攣
 上位運動ニューロンサイン(UMNs)
   正常/亢進/慢性反射
   正常/筋肉緊張の亢進
   麻痺/不全麻痺
 筋肉萎縮
急性の不全麻痺
椎間板ヘルニア
外傷性疾患
線維性異形成
意識的固有感覚
悪くなる  良くなる
随意運動
悪くなる  良くなる
浅在性痛覚
悪くなる  良くなる
深部痛覚
6)意識的固有知覚(固有位置感覚)とは?
  プロプリオセプション:代表的な姿勢反応検査
  運動機能障害(随意運動)が発症する前に発症する
  脊髄の圧迫障害の最初の徴候
  病変部の位置ぎめは出来ない

 随意運動とは?
    完全麻痺?
    不全麻痺?
  浅在性痛覚が発症する前に発症する

 浅在性痛覚とは?
  おとなしい犬は瞳孔のみが動く程度のこともある
  深部痛覚が発症する前に発症する

 深部痛覚とは?
  骨をつかむ要領で行う
  この痛覚がないと予後はむずかしい!