猫の下部泌尿器症候群
猫の下部泌尿器の病気とは?その症状とは?
- 何回もトイレに通うが、尿が少ないか出ない。
- トイレで長くきばったりする。
- ポタポタと尿がもれたりする。
- 尿に血が混ざっている。
- お腹を痛そうにして元気がでない。
すべての猫の病気のうちの10%は、この病気で、大変よく見られる病気です。一生のうち一度は、この病気に罹ってもおかしくないと言われています。この病気は、何か便秘の症状と似ていますが、以上のこれらの症状があると疑われます。通常この時には食欲不振も起こります。最悪の場合は、膀胱からの尿がまったく出なくなり、そのままにしておくと、だんだんと元気がなくなり、やがて嘔吐をすることさえあります。この嘔吐の症状が出てしまうと、かなり危険な事です。膀胱炎から腎臓炎、そして最後の尿毒症になっている可能性があるからです。
その診断はどうするのですか?
- お腹を軽く触ると、膀胱が硬くなっている。
- 血液検査で腎臓の値が高くなっている。
- X線撮影検査で膀胱が膨満している。
- ペニスの先端に何かが詰っている。
- なんとなく腹部が拡大している。
膀胱からの尿がまったく出なくなった場合は、お腹を軽く触ると、膀胱が硬くなっています。まるで木でできたボールのようです。もうこれで診断はできるのです。一刻も早く処置をしなければなりません。膀胱が硬くなっていない場合は少し余裕がありますが、やはり直ちに治療が必要となります。これらの場合は治療と共にその他の検査も必要となります。
まずは尿検査です。尿の成分や結晶や細菌の有無を調べます。その他、X線撮影検査や超音波検査等、どんな程度に下部泌尿器症候群が存在しているのかを注意深く調べます。まれに、この病気は非常に扱いにくく、治療も長期にわたり、飼い主の方の費用の負担もたいへんなもので、予後不良などになり、いずれ死亡することもある、たいへん不幸な場合もあります。
その治療はどうするの?
- 膀胱の中の尿を抜いてやる必要があります。
- 時期をみて膀胱に特殊な小さいカテーテル(管)を挿入します。
- その後は点滴など輸液をしながら、水分を補給します。
- 尿の成分を分析します。
- 止血剤や抗炎症剤などを投与します。
これらの急性の場合は、尿が出なくなる、俗に言う尿閉というもので、体の中で尿の流れが止まってしまうのです。もし尿が出なくなったら・・・これは大変なことです。私達の病院の猫の時間外診療の約15%はこの病気です。前記したように、そんな場合お腹を軽く触ると、膀胱が硬くなっています。まず処置としては、膀胱の中の尿を抜いてあげる必要があります。それには針で長い管を付けながら抜きます。
その時の尿の色が問題となります。真っ赤な色の尿ですと、かなり重症です。まだ濃い黄色の色であれば良いのです。そして時期をみて膀胱に特殊な小さいカテーテル(管)を挿入しますが、通常麻酔が必要となります。その後は点滴などをしながら、電解質等を調節しながら治療を進めていきます。
結晶とは何ですか?またその成分は何ですか?
すこし専門的になりますが、結晶とは、元素あるいは化合物からできた物質ですが、結晶が多く集まると結石になります。また砂粒とか尿石と呼ばれる場合もあります。その主成分はストラバイト(三重燐酸塩)ですが、最近は特に4~8歳に起こる場合は、シュウ酸カルシウムの場合が多いようです。
なぜ尿が出なくなるのですか?その原因は何ですか?
| 1) 水分不足 | 簡単に言えば、水ののむ量が少ないのです。いかに水を飲ませるかが問題です。昔はほんの少量の塩を与えると言うのもありましたが、(但し腎臓の機能が正常の場合のみ)安全性が確認されていませんのであまりお薦めしません。私達がお薦めしている方法は、一缶のツナ等の缶詰の汁のみに水300~500mlで薄めて、水がわりにして飲ませると言う方法やエビを茹でる時に使用した水分の部分の水ををお薦めしています。 | 
|---|---|
| 2) 年齢 | 特に1~3歳で多く発症しますが、あらゆる年齢で起こります。 | 
| 3) 性別 | 比較的雄に多く見られますが、雌にも見られますがその程度は雄と比べると重篤でない場合が多いようです。 | 
| 4) 食事 | 以前はドライ・フードを投与しているからと言われたことも言われたこともありましたが、現在ではいくつかの会社のドライ・フードは成分が変わり良くなつています。しかしその他のドライ・フードを食べている猫は缶フードに比べてこの病気の発症は高くなります。この病気が発症したら特別療法食に変えるのをお薦めします。原因は結晶(尿路の炎症を引き起す)が出来易い食事が原因です。結晶ができるのは高マグネシウム食(特に水分が十分でない場合)と、アルカリ尿(食事の種類と量と回数と細菌感染の有無が関係)が原因です。この病気のために作られたいくつかの特別療法食が利用できます。 | 
| 5) 肥満 | 統計上、肥満の猫はこの病気に罹り易いことが証明されています。適正体重になるとこの病気は減少しています。 | 
| 6) 環境 | 汚れたトイレの場合に排尿回数が減少したり、新しい新鮮な水しか飲まないとか、日頃ほとんど寝ているばかりで、運動不足ぎみの場合により発症し易くなると言われています。 | 
| 7) 種類 | ぺルシャ猫やその系統に多く発症すると言われています。 | 
| 8) 性格 | 我慢しやすい性格や、凶暴な猫に発症し易いと言われています。 | 
| 9) 遺伝 | これはぺルシャ猫やその系統に代表される遺伝的な素因をもつ病気と疑われています。 | 
飼い主の方ができる予防法と管理法の重要点
- いつでも尿をしやすい環境を作る。
- 新鮮な水や、飲み易くした水をいつでも飲める環境を作る。
- 限られた生活環境からの開放に努力する。
- ストレスを少なくし、落ち着く環境を作る。
- 通常のドライ・フードの場合は、特別療法食か缶詰フードにする。
- 食事療法が出来ない場合には、尿量を増やす薬剤にする。
- 毎日の水の飲む量と尿量を調べるよう心掛ける。
- あまり寒い環境は好ましくない。
- 特別食でない場合は、いつも同じ食事よりときどき換えてみる。
- 低脂肪ヨーグルト、牛乳、チーズ、アイスクリーム等を多食している猫は発症しやすいと言われています。理由は、これらの食事はシュウ酸カルシウム含量の高い食事だからです。
まれに治りが悪い場合が、あるとのことですが?
この下部泌尿器症候群は根気よく治療すれば、ほとんどの場合は治りますが、まれに治療は長期間となり、どうしても助からない場合もあります。俗に言う難治性の下部泌尿器症候群です。そんな場合は主に膀胱に問題があり、アトニー(膀胱の弛緩麻痺で、要するに膨らんだ風船がちぢまなくなること)や間質性膀胱炎や腰椎の神経麻痺等の場合が多いようです。
