予防接種について
犬の予防接種は定期的に
人間はいろいろな伝染病にかからないように、予防接種を受けますが、同様に犬にも予防接種があります。ただ人間の場合、予防接種を初回に受ければ、ほとんど終生その病気に対する免疫ができますが、犬は定期的に予防接種を受けなければ、効果がなくなることが知られています。
病気の種類によっても違いますが、予防接種の効果が持続する期間はだいたい1年間とされます。したがって、愛犬を恐い伝染病から守るには、年に1度、少なくとも2~3年に1度は、定期的に予防接種を受ける必要があります。
犬に必要な理想的予防プログラム
現在、伝染病の予防は、狂犬病を除いて、混合ワクチンを接種することによって行うことが多いようです。混合ワクチンの種類にはいろいろあり、2種混合ワクチン(犬ジステンパー、犬伝染性肝炎)から3種、5種、7種まであります。
| 生まれた日 | 
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|---|---|
| 3週令 | 
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| 6~8週令 | 
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| 16週令以降 | 
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| 6ヶ月~1歳令 | 
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| その後毎年 | 
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| 7歳齢以降 半年毎の検査 | 
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ワクチン接種の時期
予防ワクチンの接種は、生後6~8週間ごろに1回目を行います。その3~4週間後に2回目を接種します。その後は、年1回、少なくとも2~3年に1回は、定期的に接種します。
このように、生後1年目は最低限で年2回、それ以後は定期的に、予防ワクチンを接種する必要があります。しかし、接種回数が多くても、別に問題はありませんから、より安全を期するために、回数をもっと増やすこともできます。
たとえば、生後18~20週齢(4カ月半~5カ月)までは、1カ月ごとに接種する方がよい場合もあります。また、1年目以降も、半年に1回接種すればより安全です。
伝染病が流行している場合や、高価な繁殖犬では、接種回数を多くすることがあります。
| ●狂犬病予防注射 | 生後91日齢以降に1回接種し、以降毎年1回接種する | 
|---|---|
| 2ヶ月(8週令) | 初回の5種の生ウィルス混合ワクチンと身体検査 できれば同時に糞便検査、躾の指導 | 
| 2ヶ月と3週令(11週令) | 2回目の5種の生ウィルス混合ワクチンと身体検査 できれば同時に糞便検査、躾の指導 | 
| 3ヶ月と2週令(14週令) | 3回目の5種の生ウィルス混合ワクチンと身体検査 できれば同時に糞便検査、躾の指導 | 
| 12ヶ月(1歳令) | 4回目の5種の生ウィルス混合ワクチンと身体検査と躾の指導 | 
| 12ヶ月以降は原則3年毎 | 5種の生ウィルス混合ワクチンと身体検査と躾の指導 | 
| 2ヶ月(8週令)を過ぎて1歳未満での来院 | 初回の接種を行い、その後3-4週間隔で14週まで接種する。その場合も1歳齢で再接種する | 
| ワクチン未接種で14週令以降1歳未満での来院 | 初回の接種を行い、3-4週後に再接種1回。さらに1年後に再接種する | 
| ワクチン未接種で2歳齢以降に来院 | 初回の接種を行い、4週後に同じ5種の生ウィルス混合ワクチンを追加接種する | 
※原則的に健康な犬にワクチンを接種しますが、急な外科手術や病気の回復期に感染の恐れがある場合の未接種犬には、例外的にワクチン接種をする場合があります。
※特異的な感染症にかかるリスクは、犬の年齢と健康状態、他の犬との接触の程度、疾患の地理的な流行によって様々です。
※少なくとも年1回(7歳以降は年2回)の健康診断の際の身体検査は、犬の健康の評価に必要であり、またその年のワクチン接種の必要性に影響する生活様式の変化やその病気の流行を考慮することも大切です。
※ワクチン接種後まれに1時間前後でアナフィラキシー(過敏反応…顔が腫れる・元気喪失・発熱・蕁麻疹等)が起こることがあります。できれば注射後はすぐに帰らずに様子を観察することをお勧めします。
※レプトスピラ入り混合ワクチンはレプトスピラの感染の危険がある場合のみに接種します。その場合には、8週と11週齡は5種の生ウィルス混合ワクチン、14週齡はレプトスピラ入り混合ワクチン、17週齡にレプトスピラのみの死菌ワクチンを接種します。または、8週齡を5種の生ウィルス混合ワクチン、12週15週齡をレプトスピラ入り混合ワクチンの接種をします。より早く予防が必要な場合は、6週齡から接種するものでは、6週9週齢を5種の生ウィルス混合ワクチン、13週16週齢をレプトスピラ入り混合ワクチンを接種します。レプトスピラのワクチンは12週齢未満では接種しません。とくに9週齢未満のものや、小型犬(特に長毛のダックスフンドは接種をお勧めしません)では、アナフィラキシーが多いので注意が必要です。1歳齢での再接種は、レプトスピラの予防が必要な場合のみに接種します。その後は、山やその他、発症が認められる場所に行く場合に、レプトスピラのみの死菌ワクチンを1年毎必要に応じて追加接種します。
※狂犬病ワクチンと5種の生ウィルス混合ワクチンの同時接種は原則として行いません。
初乳を飲んでいない仔犬は早めに
生まれたばかりの仔犬は初乳(生後2~3日以内の母乳)を飲むことによって、免疫の約97%を母親から獲得します。約2~3%は胎盤から得ますが、ほとんどの免疫は初乳を飲むことによって、母親からもらいます。この免疫が持続する期間は通常、6~8週間です。第1回目のワクチンを生後6~8週間ごろに接種するのは、その時期に母親からもらった免疫の効果がなくなるからです。
したがって、もし仔犬が初乳を飲んでいない場合、母親からほとんど免疫をもらっていませんから、より早い時期に、すなわち生後2~3週間ごろに1回目を接種する必要があります。また、より強い仔犬を望む場合は、母親が妊娠する前にワクチン接種を行っておくとよいでしょう。
接種は身体検査を行ってから
接種の前に、体重や体温の測定など、基本的な身体検査を行う病院がよい動物病院です。また、糞便検査をして、寄生虫の有無を調べることが大切です。寄生虫がいると、予防ワクチンが寄生虫に取られてしまい、十分に効果が発揮されないことがあります。
原則としては、健康状態のよい時にワクチンを接種します。しかし、もし地域に伝染病が流行しているような場合は、その病気から犬を守るために、健康状態があまりよくなくても、予防ワクチンを打つ方がよい場合もあります。
また、妊娠中の犬にはワクチンを打たないのが現在の医学の常識ですが、実際には、妊娠中にワクチンを接種しても、胎内の仔犬に悪影響が及ぶということは証明されていません。妊娠中でも、安全だということです。したがって、妊娠に気づかずにワクチンを接種しても、心配する必要はありません。
接種後に気をつけること
ワクチンを接種してから免疫効果が発揮されるまでには、1~2週間かかります。したがって、接種後1~2週間は、知らない犬(予防ワクチンを接種していない犬)と接触することを避けるなどの注意が必要です。そして、十分な栄養を与え、ストレスの少ない環境で生活できるようにしましょう。
また、接種した当日はお風呂に入れるのを控えてください。2~3日後には、お風呂に入れても大丈夫です。人間でも動物でも、病気は治療よりも予防が大切です。予防できる病気はワクチンを接種し、愛犬の健康を守ってあげましょう。
