猫の門脈大静脈短絡
- 門脈大静脈短絡
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この病気は臨床家が知って初めて捜し始めるというタイプの病気である。 
- 門脈大静脈短絡(いろいろな名称で呼ばれる)
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- 門脈血管奇形・異常
- 門脈シャント
- 門脈体循環シャント
- 門脈体循環血管吻合
- 肝性脳症
 
- 先天的門脈大静脈短絡 VS 後天的門脈大静脈短絡
- 猫の門脈大静脈短絡
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- 猫の肝性脳症に伴う臨床症状は独特なものであるので注意。
- 若い猫で唾液を飲み込むことが多く(唾液の分泌過剰)、常に舌を舐める傾向がある猫はこの病気を疑う。
- 猫伝染性カリシウイルス感染症と間違えないよう注意が必要。
 中枢神経系の症状と流涎が診断の始まり。 - 猫の発症率は約2%である。
- 猫はほとんどが肝外性である。
 
- 猫の門脈大静脈短絡
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- 痙攣発作の病歴をもつ猫が約33%認める。
- 特に若い猫で、自然に治まる痙攣発作を持つ場合は疑う。
- 猫ではヒマラヤン猫とペルシャ猫に多く報告あり。
- 猫では症状がより典型的でないため、遅く診断される傾向があるが、診断されないこともよくあると言われる。
- 猫は手術後の痙攣発作あり。
- 尿素窒素濃度は犬では殆ど低いが、猫では約50%のみ低くなる。
 
- 後天的門脈大静脈短絡
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- 慢性の門脈高血圧症に続発。
- 門脈圧の上昇によって正常では出産時に閉じる胎仔性の血管が開き、門脈内の血流が肝臓ではなく全身循環に短絡して流れ込む。
- 最も主な原因は肝硬変。
- これらの短絡は通常多発性で著しく蛇行していて、肝外の位置もさまざまである。
 
- 門脈大静脈短絡|血清胆汁酸(SBA)の濃度
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- 胆汁酸は肝臓で合成され、腸肝循環にて門脈循環から90~95%胆汁酸が取り除かれる。
 
- 門脈大静脈短絡|X線撮影検査
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- 先天的で小肝症
- 後天的ではさまざまの結石症
- しばしば巨大腎
 
- 門脈大静脈短絡|超音波検査
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- 肝内は横隔膜の近くの肝臓内にある。
- 肝外は横断面で門脈と後大静脈を見つけ、それらをつなぐ太い血管を捜す。1本だと右腎臓の前部部分が多い。
- 絶食させると検出しやすい。
 
- 門脈大静脈短絡|超音波検査
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- パワーやカラードプラーが最適
- 小肝症
- 辺縁が不規則(腹水?)
- 肝の繊維化
- 肝硬変
- 猫独自の巨大腎
- 門脈大静脈短絡
 
- 猫の門脈大静脈短絡|血清胆汁酸(SBA)の濃度
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- 門脈大静脈短絡の診断のためには、食前と食後の胆汁酸が必要。
- 食前12時間の絶食
- 食後c/dをスプーン1杯
- 2時間後に測定
 
- 猫の門脈大静脈短絡|血清胆汁酸(SBA)の濃度
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- 食前正常値5μmol/l
- 食後正常値10μmol/l
 
- 猫の門脈大静脈短絡|血液アンモニア(BA)濃度
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- アンモニアは肝臓で代謝され、正常な濃度は低い。
- 空腹安静時は60~120μg/dl
 
- 門脈大静脈短絡|血液アンモニア(BA)濃度
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- アンモニアは肝臓で合成され、腸肝循環にて門脈循環から90~95%取り除かれる。
- それゆえ、末梢血には少量(20~120μg/dl)含まれ、門脈血には大量(700μg/kg猫は犬の倍)含まれる。
 
- 猫門脈大静脈短絡
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- 猫は手術をしても予後が悪いことが多い。また、時には再手術が必要なときもある。
- 結石の手術のみの場合もあるが、予後は難しい。
 
- 門脈大静脈短絡|内科療法
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- 低蛋白食(k/d)の投与
- ラクチュロース
- ネオマイシン
- 浣腸
 
- 門脈大静脈短絡|食事療法
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- 低蛋白食(k/d)の投与
- 高炭水化物の投与
- 食事は数回に分けて与える
- 赤身の肉は決して与えない事
 
- 門脈大静脈短絡|緩下剤の投与(ラクチュロース)
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- 1ml/kg 浣腸も可 1日3回
- 15~30ml/kg
 
- 抗生物質療法
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結腸の細菌数を減らすことによってアンモニアの吸収を減らす。 
- 抗生物質療法
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- ネオマイシン 20mg/kg
- カナマイシン 10mg/kg
- アモキシリン 20mg/kg
 
- 抗生物質療法(メトロニダゾール)
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- 10~15mg/kg 1日2回
 
- 内科療法の限界
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内科療法のみでは、あまり症状をコントロールすることができないことが多い。 
