三鷹獣医科グループ

学術マニュアル(診療)

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動物病院のためのCRI(持続定量点滴)の使用法

持続定量点滴(CRI-Continuous Rate Infusions)とは、正確に計算された薬剤を連続的に静脈内に注入する方法です。CRIにて投与された薬剤は、安定した状態での濃度を維持しながら、その効力を発揮します。

“CRI(持続定量点滴)については、臨床家には一見その計算方式が複雑で敬遠されたり躊躇されたりする傾向にあります。また、手計算では間違いを起す可能性が捨て切れません。そこで、アメリカの緊急医療専門医が使用しているエクセルのワークシートを活用したCRIの方法を紹介することとしました。

昨今の小動物臨床においてその薬物動態の特性を活用した治療が多く使用され、CRIのその重要性が増しています。今後は多くの薬剤がCRI又は併用が推奨されると予想されます。CRIのマスターは今後の獣医学の重要課題となることでしょう。”

体表面積の計算式が追加で記載されています。抗がん剤などの体表面積計算をする時に使用すると便利でしょう。

“これは米国のDr, Tim Hackett先生の御好意(日本語訳の許可済)によるもので、各々の薬剤は日本の用量に変換してありますので、そのまま使用できますが、あくまでも自己責任で御使用ください。薬用量については多少の違いが有ると思われます。

例えば米国ではドブタミンは12.5mg/mlだが日本は、20mg/mlや3mg/mlケタミンは1mlが100mgだが日本では50mgなど。”

獣医師向けCRI エクセルワークシート
※御自由にダウンロードして御使用ください。Thank you for Dr, Tim Hackett
CRI Excel worksheet for Veterinary use (Japanese edition)
日本語版作成 獣医師 松葉 洋宗

このワークシートは数値を記入する場所以外では書込みがされないように保護がされています。その為に、誰が使用場合でも入力した数値に対して一つの結果が出るようになっています。

ジアゼパム(Diazepam) 5mg/ml 0.1-0.04mg/kg/hour 抗痙攣精神安定剤
ジルチアゼム(Diltiazem) 5mg/ml 0.2-0.5mg/kg/hour カルシュウム阻害剤
ドブタミン(Dobutamine) 20mg/ml 2-20ug/kg/minute 合成カテコラミン・陽性変力剤
ドーパミン(Dopamine) 20mg/ml 2-20ug/kg/minute ドパミン作用薬・B作用薬
エピネフィリン(Epinephrine) 1:1000 1ug/kg/minute Alphaとbeta拮抗剤
フェンタニール(Fentanyl) 50mg/ml 1-5ug/kg/hour 麻薬系鎮痛剤
インスリン Insulin(regular) 100U/ml 1.1-2.2U/kg/day ホルモン
イソプロテレノール(Isoproterenol) 0.2mg/ml 0.04ug/kg/hour Betaアドレナリン作動性拮抗剤
ケタミン(Ketamine) 50mg/ml 1-3ug/kg/minute 神経弛緩性鎮痛剤
リドカイン(Lidocaine) 20mg/ml(2%) 50-100ug/kg/minute 心室性不整脈
メトクロプラミド(Metoclopramide) 5mg/ml 1-2mg/kg/day 胃腸管刺激剤・制嘔剤
プロカインアミド(Procainamide) 100mg/ml 20-50ug/kg/minute 抗不整脈剤
プロポフォール(Propofol) 10mg/ml 0.05-0.2mg/kg/minute 短時間作用催眠剤
参考文献

コロラド大学の獣医学部の緊急治療部門のDr,Wayne E. WingfieldのContinuous Rate Infusionsの解説。薬剤、用量、用法や計算式とその答えがあります。