外科部門
安全な麻酔について
安全な外科手術の前には、安全な麻酔が必要です。当動物病院の麻酔管理は通常5つ以上の、異なる方法の麻酔管理が行われます。必要な麻酔管理には、麻酔前の検査、麻酔直前の聴診、(心音、肺音等)及び視診、触診を始め、血圧、酸素飽和濃度、体温測定、その他心電図、呼吸数、呼吸中の炭酸ガス濃度、酸塩基平衡等があります。
                            特にパルスオキシメーター(酸素飽和濃度)とカプノブラム(呼吸中の炭酸ガス濃度)の組み合わせは、麻酔中の事故を93%減らす麻酔には麻酔を管理する従事者が付き添い、各種の記録を行います。

主な手術例
軟部外科
| 眼の手術 | 眼瞼腫瘤 眼瞼内反 瞬膜腺の脱出 眼球突出 角膜潰瘍など | 
|---|---|
| 耳の手術 | 耳血腫 外耳道耳介の腫瘤 外耳道切開 外耳道切除 鼓室胞切開など | 
| 鼻の手術 | 外鼻腔狭窄など | 
| 口の手術 | 口腔内腫瘤 口蓋裂など | 
| 顎の手術 | 下顎上顎腫瘍など | 
| 頚部 | 甲状腺摘出 上皮小体摘出 唾液腺 リンパ節摘出など | 
| 上部気道 | 軟口蓋過長症 喉頭小嚢反転 喉頭麻痺 気管虚脱(頚部)など | 
| 下部気道 | 胸腔内腫瘍 横隔膜ヘルニア 肺腫瘍 肺葉捻転 心膜横隔膜ヘルニア 気胸 膿胸 乳糜胸 胸腺腫など | 
| 循環器 | 心タンポナーデ 僧帽弁閉鎖不全症(ご紹介)など | 
| 食道 | 食道チューブの設置 食道内異物 食道裂孔ヘルニアなど | 
| 胃 | 胃内異物 胃拡張胃捻転症候群 胃腫瘍 胃洗浄 胃瘻チューブの設置など | 
| 小腸 | 腸内異物 小腸腫瘍 腸重積 腸捻転 小腸チューブ設置など | 
| 大腸 | 大腸腫瘍 巨大結腸症など | 
| 直腸肛門 | 肛門嚢疾患 肛門周囲腫瘍 直腸脱 会陰ヘルニアなど | 
| 肝臓胆嚢 | 肝臓腫瘍 肝臓の生検 胆嚢粘液嚢腫 胆石 胆管閉塞 肝葉捻転など | 
| 膵臓 | 膵臓腫瘍(インスリノーマ)など | 
| 脾臓 | 脾臓腫瘍 脾臓捻転など | 
| 腎尿管 | 腎臓結石 尿管結石 腎臓腫瘍など | 
| 膀胱尿道 | 膀胱結石 膀胱尿道腫瘍 尿道結石 尿道閉塞 膀胱破裂など | 
| 生殖器 | 前立腺肥大 前立腺腫瘍 精巣腫瘍 包皮陰茎腫瘍など 乳腺腫瘍 卵巣腫瘍 子宮蓄膿症 子宮腫瘍 膣腫瘍 帝王切開など | 
| 皮膚その他 | 皮膚腫瘤腫瘍摘出(肥満細胞種 軟部組織肉腫など)臍ヘルニア 鼠径ヘルニア など | 
整形外科
| 四肢骨盤の骨折 | 橈尺骨骨折 上腕骨骨折 脛骨骨折 大腿骨骨折 骨盤骨折など | 
|---|---|
| 肩関節 | 肩関節不安定症 肩関節脱臼 | 
| 股関節 | 股関節脱臼 レッグペルテスなど | 
| 膝関節 | 膝蓋骨脱臼 前十字靭帯断裂 半月板損傷など | 
| その他 | 下顎骨折 | 
神経外科
椎間板ヘルニア 馬尾症候群 など
主な手術例の解説
椎間板ヘルニア
神経学的疾患のアプローチ
| 質問1. | 椎間板ヘルニア(Intervertebral disc Diease)とは何ですか? | 
|---|---|
| 質問2. | なぜこのような病気が起こるのですか? | 
| 質問3. | どのようにしたら予防できますか? | 
| 質問4. | 起こり易い年齢はありますか? | 
| 質問5. | 椎間板ヘルニアの類症鑑別診断する病気は何ですか? | 
| 質問6. | この病気の起こりやすい犬種はありますか? | 
| 質問7. | どのようにして診断するのですか? | 
| 質問8. | 予後の判定にはどのような検査が重要ですか? | 
| 質問9. | 外科手術が絶対的に適応となるのは、どんな場合ですか? | 
| 質問10. | この病気はタイプ1型とタイプ2型の2つに分けられると聞きましたが? | 
| 質問11. | この病気の程度や予後の判定はどのようにしてするのですか? | 
| 質問12. | 診断又は手術に際してその方法を決めるのに、CT、MRI等は有効ですか? | 
| 質問13. | 診断又は手術に際してその方法を決めるのに、脊椎造影も有効ですか? | 
| 質問14. | 犬の椎間板ヘルニアの治療はどのようにするのですか? | 
| 質問15. | 外科手術と内科療法で治る確率の違いはありますか? | 
| 質問16. | どんな外科手術をするのですか? | 
| 質問17. | 椎間板ヘルニアで急に死亡する、脊髄軟化症とはどんな病気ですか? | 
| 質問18. | 治療後どのくらいたてば歩けるようになりますか? | 
| 質問19. | 手術後のリハビリテーションは有効な手段ですか? | 
| 質問20. | 胸と腰の部分の椎間板ヘルニア(腰麻痺)は、どのくらいの頻度で起こりますか? | 
| 質問21. | 椎間板ヘルニアの最も起こりやすい位置はどこですか? | 
| 質問22. | 犬の椎間板ヘルニアの手術後のレーザー治療は有効な手段ですか? | 
お読みください ~外科手術を受ける動物の飼い主の方へ~
はじめに
どなたもが、自分の動物が外科手術を受けるなんて思いもよらないことだったでしょう。しかし、ある種の病気は、手術をしないと救えないのです。あなたの動物が、実際に外科手術を受ける状況になり、何かとまどいや不安を感じていらっしゃるかもしれません。とはいっても通常は、格別に心配することはありません。すべての手術において言えるわけではありませんが、飼い主の方が思っている程ご心配なさる必要はありません。ある状態において、例えば危篤状態での緊急手術においては、危険率は高くなりますが、そのような場合には、あらかじめお話いたします
                                    あなたの動物が、手術を安全に受けられるようにするためには、飼い主の方の協力がぜひとも必要です。そのためには、私達の注意に対して、あなたが建設的な御意見を下さることを希望いたします。そうすることによって、私達はあなたの動物に対してサービスを常により改善させてあげることができるからであります。
                                    また手術を行なう場合には最大の芸術的臨床技術を駆使し、その動物の抱えている問題についてそれぞれ独自の解決法を、個人的に話し合って良い方向に向けたいと考えております。
手術を受けるための予約等について
手術には麻酔を必要としますので、緊急の手術を除いて、ある程度の時間6-12時間以上は絶食が必要となります。また、幼若な動物や特に体が小さいなど、特別な場合を除いて手術前、6~8時間ぐらいから水も与えないで下さい。ご予約の上、午前中までの間に動物をお連れ下さい。当日は手術のための最後のチェックを行ないます。検査が行なわれていない時や、追加が必要な時は、そのときに行ないます。
                                    緊急状態で連れてこられた場合には、まず、手術が必要かどうかを確かめ、必要ならそれに適切な方法を実施致します。時にはあなたの動物の症状がそんなに急がない時は、緊急例を直ちに診てやらなければなりませんのでそれを先に診て、あなたのほうが後になることがあります。そんなに多くはありませんが、緊急例の手術をしなければならないために、あなたの動物の手術予定を立て直さなければならない場合もあります。
                                    私達はできるだけ初診時や、あなたが動物を見舞いに来られたり、また手術後連れに来られたときに、あなたとお会いする機会を作るように心掛けております。こうすることによってあなたのお顔とお名前が一致できることになりますから。外科医は手術前または手術後にあなたの動物の状態についてお話することがよくあります。また診察がすみましたら手術費用についての説明をいたします。
手術前の検査の必要性について
手術をするためには麻酔をするわけですから、手術に危険性がないか、いろいろと検査を行ないます。手術前の検査については年齢などを考慮して状態を調べます。このことは、今まで分からなかった病気についても分かることがあります。主な検査としては、身体検査、X線検査(胸部、腹部)、血液検査、血清化学検査、尿検査、心電図検査、血圧検査、超音波検査(胸部、腹部)、CT検査等です。身体検査はもっとも重要で、病歴、視診、触診、聴診、打診などが綿密に行なわれます。特に麻酔直前の聴診が重要視されます。
                                    血液検査、例えば貧血があれば、輸液や輸血についての情報が得られますし、心臓、腎臓、肝臓などの各臓器との関係や働き具合も推定できます。尿検査については、例えば尿糖、潜血、蛋白、pHなどの存在や腎臓の機能が調べられますし、なによりも重要なのがその比重です。糞便検査は寄生虫を調べることができます。X線検査は病気の広がり、各臓器の大きさや、異物、腫瘍などを調べることができますが、CT検査をすることにより確実性が増します。
                                    私たちの外科部門では、すべての麻酔をかける動物に対して身体検査以外に最低でも血液検査(9項目以上)と心電図検査、またできるだけX線検査と中高齢には超音波検査をお勧めしています。また骨の骨折手術等にはできるだけCT検査にて術前に3Dで立体的に骨の構成を調べるようにして、安全を期しています。
                                    これらの検査を行なうと、費用はそれだけ多くかかりますが、最終的にはよい結果を生むことになると思います。また特に歯の病気(歯石等)があるかどうかもチェックされます。歯石がある場合には、特に手術後に歯石の除去をお薦めします。このことは、非常に重要です。歯石があるということは・口の中に多くの細菌がいるということで、白血球数が増加したりします。このことは他の病気で白血球数が増加している場合などに覆い隠すことになり、病気をより分からなくしたりします。歯石はあらゆる病気の原因ともなり、これが歯は健康の窓といわれる所以です。その他麻酔時に状態によって、去勢手術、避妊手術、マイクロチップの装着、大型犬の胃捻転防止の胃固定、手術後の食欲不振が予想される場合のチューブ(食道、胃、空腸)の装着等いろいろな提案ができる場合がありますので、その際にはお話いたします。
麻酔の安全性について
最近では麻酔の進歩に伴い、危険率は大変低くなっています。事実現在では、動物に行なう麻酔は人間の行なう方法と、全く変わらず高度な技術と、確実な監視のもとに行なわれています。外科即、麻酔といわれる程麻酔は重要です。そのためには、あらゆる検査の結果を評価してあなたの動物にはどの麻酔法がよいか?どんな点に注意したらよいか?などが、外科部門で検討されます。現在の最新の獣医学では、吸入麻酔が最も安全といわれているので、主にその方法を用いています。通常の手順は以下の通りです。マスクにて5分間酸素が与えられ、注射(通常はアルファキサロン又はプロポフォール)か、マスクにて気管チューブが挿管できるまでの超短時間の麻酔がなされます。そして気管チューブから吸入麻酔と酸素が与えられます。手術は手術室にて行なわれます。動物の心臓の状態は手術前、手術中、または手術後、麻酔から覚醒するまで、モニター画面に描き出される心電図、呼吸曲線、血圧、酸素飽和濃度、呼吸中の炭酸ガス濃度、心音、体温等の監視装置によって、異なる方式の4-5以上の方式によってモニターされます。そして麻酔中は、静脈の血管から自動点輸液装置によって、点滴が行なわれ必要であれば水分の補給や必要な薬品の投与が行なわれます。以上のように行なわれるので、麻酔が安全に行なわれます。
外科手術について
手術を行なうには、それなりの設備が必要ですが、私たちの外科部門は装置・器具について、非常に自慢できるものであると信じております。例えば手術室には、吸入麻酔装置と人工呼吸装置、外科用手術台、無線の心電図モニター、水流式温水毛布装置、心音モニター、温熱式呼吸数モニター、パルスオキシメーター(酸素飽和度測定装置)、カプノグラフ(呼吸中炭酸ガス濃度測定グラフ)、体温モニター、吸引器、高周波電気メス、液体窒素を用いたクライオリージェリーセット・ハイスピード・ドリル、無影燈、ハロゲン・ランプ、自動輪液装置、非常用ランプ、酸素及び窒素のパイピング、緊急用薬品セット一式、シャーカッテン、余剰ガス排気装置、手術用骨格標本、超音波装置、内視鏡装置、腹腔鏡装置などが設置してあります。
                                    また手術する場合外科医は、消毒された手術用帽子、マスク、手袋、手術衣を身に着けて手術を行ないます。動物に対しても、手術する場所は電気バリカンにて広範囲にわたって毛を刈り、外科用消毒剤のクロルヘキシジン等にて何回も洗浄や消毒が繰り返されます。このように厳格な手順を踏むことによって、汚染や感染の機会を少なくします。
                                    また手術器具に対しても、小さな動物から大きな動物までの、種類別のセットされた滅菌消毒済みのパックが10パック以上用意されています。また特殊な手術のためには、眼科用、整形外科用、内臓外科用等用途別にいつでも、使用できる状態にあります。麻酔中は通常、麻酔記録帳を用いて麻酔の経過等を助手がこれを記録します。これらを行なうことで外科医は、手術に集中できるわけで、考えられるすべてのマン・パワー(人間の力)を総動員して、よい結果が生じるよう常に努力し向上するよう目指しています。
おわりに
私達が特別な手術を行なう主な理由は、動物の苦痛を救うことと、出来るだけその病気を治すことにあります。私たちはあなたの動物のあらゆる面での看護に対して最大の努力を払います。もし何か御意見とか御質問の点がありましたら、ご遠慮なく申し出て下さい。私たちは動物が酷い外傷で病院につれてこられることを経験しております。そんなとき私たちは本当に自分の動物が同じような外傷を受けたと同じ気持ちになり、まずは痛みを止めることから始めます。私達がこの手術をお受けしたときは、私たちも感情的かつ肉体的に同じような気持ちと状態になっているのです。手術後の管理、特に痛みを感じていないか、苦しくないかを監視します。24時間完全看護の体制で引き継がれて、絶え間ない治療が行われます。
退院後の管理・処置について
動物の回復は手術・治療後の管理によって大きく左右されます。退院後に動物が受ける処置および管理は、私達獣医師の手を離れ、飼い主の皆様の手によって行なわれることになりますので、次の事に気を付けてアフターケアを心掛けて下さい。
| 1 | 退院後、家に着きすぐに多量の食事や水を与えることは避けて下さい。多くの方がこのようなあやまりを起こし、その後吐いたり、下痢をする事がしばしば伺われます。家に着いたらまず、1時間位は待ち、それからごく少量の食事と水を与える様にして下さい。 | 
|---|---|
| 2 | 手術後の動物の場合は、激しい運動は控えて縫合部に力のかかる運動も全て避ける様にして下さい。また、ギプスや包帯をしたペットでは、それが清潔な状態で正しい位置にあるかどうかを常にチェックして下さい。家でのアフターケアが適切でない為に間頴が生じた場合には、ギプスや包帯のやり直し、麻酔その他の処置でさらに費用がかかる事になります。抜糸は手術後10日から14日の間に行ないますが、その際その後の注意について説明いたします。抜糸は、獣医師が傷の治り具合をチェックする意味もありますが、当院では料金は無料で行ないます。 | 
| 3 | 薬を飲ませる場合は必ず指示に従って下さい。特に指示のあった場合を除き、他の時の為に薬を多量に取って置く事はしないで下さい。また獣医用薬品の中には特殊な薬剤があり、人体に使用した場合には有害な事もあるので、特に子供さんの手の届かない所にしまって下さい。薬を正しく使用しなかった場合の、その他の影響についての責任は負いかねますのでご注意下さい。 | 
| 4 | 退院後のペットは注意深く観察し、回復状態に疑問が有る場合、または獣医師から説明を受けていない状態が生じた場合には、ご遠慮無く電話でお確かめ下さい。また、縫合した所や包帯を動物が噛んだり、擦ったり、引っ掻いたりする場合にも、連絡をお願い致します。 | 
手術室の設備
- 麻酔器
- 人工呼吸装置
- 麻酔モニター(手術モニターには心電計、持続体温モニター、血圧計、呼吸モニター人工呼吸器が搭載されています)
- 超音波装置
- オサダ半導体レーザー
- 高周波電気メス
- 血管シーリングシステム
- ハイスピードドリル
- 内視鏡2台
- ビデオオトスコープ
- 保温器
- 歯科用X線装置
- X線読影モニター
- 腹腔鏡
- 歯科ユニット


